②底が抜けたセーフティネット(作家・活動家 雨宮処凛)
「派遣の仕事が今日でなくなり、明日以降泊まる場所もありません。こんな生活を何年も続けています。もう疲れました」
「所持金20円。3日間、何も食べてません」
「普通の生活がしたい。家があって布団で寝られる暮らしに戻りたい」
これらの言葉は、コロナ禍の2年数ヶ月、あるメールフォームに届いたものの一部だ。 それは「新型コロナ災害緊急アクション」(以下、緊急アクション)のメールフォーム。緊急アクションは、コロナ禍が始まってすぐの20年3月、反貧困ネットワーク(理事長・宇都宮健児、私は世話人をつとめている)が呼びかけ、貧困問題に取り組む40ほどの団体によって結成された。
参加団体は、外国人支援を続ける団体やDV問題に取り組む団体、また長年ホームレス支援を続ける団体などもあれば、「新型コロナすぎなみアクション」「フードバンクネット西埼玉」「府中緊急派遣村」といった具合に、地域で活動する団体もある。
そんな緊急アクションが結成された理由は、コロナ禍により、困窮者がどっと増えることが予想されたから。特に20年4月、全国各地に初めての緊急事態宣言が発出された際は街から人の姿が消え、日本中が動きを止めた。家なき人々が夜を過ごすネットカフェにも休業要請が出され、大勢が路頭に迷うこととなった。このような事態を受けて20年4月、相談を受け付けるメールフォームが開設されたのだ。以来、今日に至るまで連日、冒頭のような悲痛なSOSが届けられている。
その数は、実に2000件以上。6割以上を占めるのが10〜30代だ。また、女性も2割ほど。メールをくれる人の83%がすでに住まいがなく、50%がすでに携帯も止まっている状態。そして多くが全財産1000円以下。家も所持金もなく、携帯も止まっている―。そのまま放置したら餓死してしまうような状態の人々が、日々生み出されているのである。
そんな人たちからSOSを受けると、支援者たちが「駆けつけ支援」をする。なぜ駆けつけるかといえば、多くの人が移動するための電車賃すらないからだ(東京近郊以外など遠方の場合は、その地域の支援団体を紹介する)。そうして聞き取りをし、住まいがない場合(寮やアパートを追い出された、ネットカフェ暮らし、路上などさまざま)は近くの安いホテルをとって泊まってもらう。残金がない場合は食費も給付する。そうして後日、生活保護など公的支援につなぐというのが支援の流れである。
(P.68-P.69 記事抜粋)