おめでとうございます!
オカヤイヅミさんが手塚治虫文化賞を受賞
漫画家が描いたイラストを使った装丁が多くなっているのは、ここ十数年の出版界の一傾向だ。その背景には、漫画文化の広範な社会への浸透と、現代の編集者、デザイナーたちの新たな抒情の探究があると思う。季刊『社会運動』のオカヤイヅミさんの起用も、その流れのなかにある。
オカヤさんの作品には、都市に住む人間のおかしさと哀しみがよく表現されている。現代的な抒情と社会問題のモンタージュから、新たな希望の感覚が生まれることを期待したい。
本誌の表紙絵を描いているオカヤイヅミさんが、この2022年6月、第26回手塚治虫文化賞短編賞を受賞しました。
1997年に創設された手塚治虫文化賞(主催・㈱朝日新聞社)は、「マンガ大賞」「新生賞」「短編賞」「特別賞」の4賞があります。
そのなかの短編賞を受賞したのは2作品、『白木蓮はきれいに散らない』(小学館)と『いいとしを』(KADOKAWA)です。
『白木蓮は?』は、高校の同級生の孤独死をきっかけに久々に集まった、現在の皇后と同じ1963年生まれの女性3人が主人公の物語。
『いいとしを』は、母の死を機に老齢の父と同居することになったバツイチの42歳男性が主人公の作品です。
どちらの漫画も、ストーリー展開というよりは、登場人物たちの微妙な心理の描き方を楽しむ作品になっています。
そんな漫画を描くオカヤさんは、打ち合わせでお会いすると、「昨日はホットサンドを作ってました~」などといつも飄々としている人です。
オカヤイヅミさん、手塚治虫文化賞おめでとうございました!
オカヤイヅミ
漫画家・イラストレーター。1978年東京都生まれ。
2011年『いろちがい』(マッグガーデン)で漫画家デビュー。著書に、受賞作のほか『いのまま』(芳文社2018)、『ものするひと』(KADOKAWA2019)などがある。
趣味は「自炊」。好きな漫画家は、「ものすごくたくさんいるので、挙げていくと紙面が埋まるくらいだと思います」とのこと。
(P.128-P.129 記事全文)