生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

子育て支援ルポ①
子ども食堂から見えてきた困窮者支援の現実
(NPO法人ワーカーズ・コレクティブ ういず ―千葉県柏市)

【好評発売中】季刊『社会運動』2023年1月発行【449号】特集:政治の貧困と子ども

子ども食堂は行政の出先機関ではない

 

 ういずがワーカーズの活動として、子ども食堂を開いても事業的な収入になるわけではない。それが、コロナ禍で助成金を受けられるようになったことで活動の規模が格段に拡大していった。


 しかし、地域で子ども食堂を運営する団体のなかには、行政機関の施設を借りて開催してきた団体もあり、コロナで活動拠点を失い、ひとり親家庭などへの食材配布の機能を担うことに負担を感じていることもわかってきた。それは、子ども食堂の多くが地域のボランティアの活動に支えられ「料理を作るのが好きで、みんなで楽しく食べられて、喜んでもらえて、楽しい活動」の域を出ていないにもかかわらず、コロナなどの影響で厳しい経済状況に陥った家庭の援助活動を担うことになったからだ。コロナ感染が始まった当初は、このような支援活動は数カ月で終わると想定して引き受けたが、すでに3年も経とうとしている。助成金を受けての業務は公的な責任を負い、それに関連する収支報告などの作業も発生し、荷が重いのが現状だ。子ども食堂を運営してきた人たちのイメージとかけ離れた活動に疲弊している声があがっている。


 「現在の子ども食堂の活動は、本来ならば政府がやるべき仕事。その肩代わりをさせられている」と北田さんは指摘する。行政は食支援業務を子ども食堂に丸投げし、地域で支え合うつながりをつくろうとしている人たちに着目し利用している。「真面目に地域貢献に取り組む人の〝やりがい搾取〟のようなものです。一方で、食材などを期待して待っている人がいます」。しかし、実態は政府の単年度ごとの政策に左右され、一時的な「ばらまき政策」の一翼を担わされてきた。今後は支給される食品や提供されるものが少なくなってしまうと不安も出てきているという。


 行政の食の支援を窓口として子ども食堂が機能するのなら、次の生活支援への移行や学習支援の相談などにつながっていくような活動でなければ、サークル活動の域に留まってしまうかもしれない。「ボランティア活動にやりがいを見出すことは否定しませんが、子ども食堂が社会の課題に向き合う運動に転換できなければ、継続的な社会貢献の活動にはならないと思っています」と、北田さんは現状に懐疑的だ。

 

生活困窮の問題解決は政策で

 

 北田さんは「社会問題に向き合って私たちが何かを解決できたのか、と言えばまだ何も解決できていません」と言う。例えば、ひとり親家庭になると半数くらいの人は低所得世帯になってしまう。それに対して米を一回配っても解決するはずがないのは明らかだ。生活困窮は複合的な問題が重なっており、一面だけ取り上げても解決には至らない。特にシングルマザーの就労の場合は、働き方の歪みや女性ができる仕事は限られている状況が未だに存在する。その先にはジェンダー不平等の問題もある。そのような問題を根本的に解決していくのは本来ならば、国の政策によって行われるものだ。現実的にシングルマザーは働く時に子どもを安心して低額で預けられるところがないので、就労の選択が狭まっている。離婚時の裁判で決まっても養育費が払われなかったりする。様々な困難な課題を食支援の場で見聞きするが、解決することはできない。「私たちがやっているのは少し垣間見える、その場しのぎのところだけであって、本当に見たくないところは蓋をしているのです」と北田さんは話す。以前に比べ、SOSを発する人が増えてきた。だが、子ども食堂などで出会う人は厳しい現実を晒されたくはなく、いまいる自分を認めてそっとしておいて欲しいと思っている。「私たちの役割は何気ないおしゃべりでホッとさせることで十分。陥っている状況を他の機関などにつなげることはできます。その先は行政としっかり連携し、いろんな地域資源とつながっていく部署が必要なのだと思います」と、北田さん。また、この間、食材などを無料で配布することで、もらうことが当たり前になってしまっている光景も見られる。女性の自立支援の方策も併せて国は明確なビジョンを提示していく必要がある。子ども食堂は子どもの貧困問題を解決する場ではない。


 困難な状況の人を支える活動を担っている多くは非営利団体だ。資本主義の市場経済下では事業として成り立たず、制度の隙間にこぼれたものを受けとめる非営利団体のボランティア活動だと位置づけ、企業も行政もお金を回さない。「社会課題の解決を丸投げするのなら、ちゃんと予算を付けるべきです」と北田さんは訴える。支える機能を持つところに当たり前のようにお金が循環する仕組みが必要だ。そうすることで、責任を持った対応ができ、地域の豊かな人材を集めて解決の糸口を見つけることもできる。未来につながる子どもたちへの支援は民間の志に拠るのではなく、「もの」「かね」「ひと」を十分に確保し、公的な充実した施策が必要だ。

(P.13-15記事抜粋)

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