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「共に民主党」敗北、地域政治を再生する道(韓国・城南市 元・社会的経済政策官/市民セクター政策機構客員研究員 崔 珉竟<チェ・ミンギョン>)

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「共に民主党」の敗北後、社会的経済を否定する新大統領と新首長

 

 2022年度の地方自治選挙の結果、各地で自治体首長が交代した。以来、新市長の公約に合わせて政策と予算化が実施されつつあり、前任者の痕跡を消すことが目立つようになった。

 

 ここで自治体の変化について解説する前に、尹?悦大統領の下で、「市民社会活性化と公益活動増進に関する規定」を廃止する手続きに入ったことをお伝えしたい。この規定は、「政府が市民団体を支援して市民社会を活性化する」という目的で、文在寅政権時の2020年5月に施行された。この4条によると、関係する中央行政機関は市民社会委員会の審議を経て、市民社会活性化のための施行計画を策定し実行しなければならず、地方自治体も条例を制定して施行計画を作ってきた。この規定がなくなれば、政府の支援事業に依存して活動している多くの市民団体が影響を受けることになるだろう。特にマウル共同体(注1)運動や障害者の自立と自活を助ける各地域団体などが深刻な状況に置かれることになるだろう。さらに深刻な問題は、市民団体の存続に影響を与えかねない、この規定の廃止を政府が非公開で強行しようとしているということだ。

 

 自治体レベルでは、市民参加のための事業において全国の自治体を牽引してきたソウル市の変化が、全国に多大な影響を与えるだろう。ソウル市では、朴元淳前市長の重点事業だった「ソウル市マウル共同体総合支援センター」事業が中止される。このセンターは2012年、マウル共同体事業を効果的に推進するために設立されたソウル市の中間支援組織であり、マウル・自治政策研究、広報、教育、各自治区に設置されたマウル共同体支援センター支援などを主管してきた。

 

 ところが、2021年に就任した呉世勲ソウル市長は、「ソウル市立て直し」を唱えてマウル共同体事業に対する大々的な監査を推進し、不公正・特恵・非効率であったと指摘してマウル共同体総合支援センター事業の終了を決めた。また、社会的経済支援センターについても条例を改正して事業を中止しようとする動きがある。ソウル市におけるこうした方針は全国の自治体にも影響を与え、当該事業の縮小と支援センターの廃止につながることが確実に予想される。実際、私の住む城南市でも、マウル共同体支援センターの既存職員が契約終了となり、採用面接をしても適格者なしとなった。さらに、2023年度の社会的経済に対する主要事業の予算削減も進められている。

 

城南市の新たな地方自治を模索する修練会

 

 城南市の新市長は、いまだに「前市長が不当に行使した市政活動を暴く」ことに汲々としており、市民に向けた市政をまともに実行せずにいる。市議会も市長派の与党が多数のため、市の行政担当者たちは共に民主党市議の提案や要求については極めて消極的なふりをしている状況だ。また、市民社会団体も自分たちの政策と予算確保のため、役所詣でに余念がないところが増えている。

 

 それでも他方、「共に民主党が選挙で負けたからといって、なぜ城南市民が敗者にならなければならないのか」という問題意識を持った市民が登場し、ある集会が企画された。その目的は、城南市の市民社会団体は2022年6月1日の地方選挙に向けて様々な意見を集約し、政策提案を行っていたのだが、選挙後の現在、その内容について評価しながら、城南市における地方自治の現実を診断し、新しい活路を模索することだった。そのスタートとして、8月26日?28日に「城南市民社会活動家・修練会」を開催した。修練会は、城南民主化運動事業会が主管し、地域の市民団体(協同組合、労働組合、環境団体、教育団体、民主化運動事業会、女性団体、歴史団体など)から活動家40人が参加した。修練会では「城南の地方自治再生方案」を主題にして、地域社会で長らく環境運動を主導してきたハ・ドングン板橋環境生態学習院院長が発題を引き受け、参加者が討論した。

 

 そもそも修練会を開催するに至った問題意識としては、今回の大統領選挙と地方選挙の結果を通じて大きく三つの問題が浮かび上がったことがある。
 第一の問題は、巨大な二大政党(共に民主党、国民の力)による地方選挙の植民地化である。両党による公認の有無が当落と直結するため、地域住民は選挙に背を向け、地方の政治家は中央政党の顔色だけを伺えば済むという、地方自治制度の壊滅的な瓦解が露わになっている。基礎自治体議員に出馬するには、二大政党から公認を得ないと当選しにくい(国民の力、共に民主党を除く少数政党(正義党、進歩党、緑の党など)の候補者が当選できない)のだ。また、多党制への選挙制度改編も両巨大政党がカギを握っているため、実現は期待しにくい。

 

 第二に、地域社会の内部に政治指導力を発揮しうる環境がないという問題が、今回、切迫性を持って浮上した。その一要因
として、地域メディアを活性化できなかった点が指摘されたが、筆者の考えではそれは付随的・外部的条件であり、むしろ地域社会に固有の課題が地方選挙の過程で政策公約化されるよりも、政党としての課題や全国的な課題が重視され、地域の課題が後景化してしまったという点が核心と考える。市立医療院の設立のような議題が地域政治にあまり存在しなかった。

 

 第三の問題として、旧都心の再開発に伴い、有権者の意識が保守化している兆しがあることだ。再開発が地域住民の階層構造を変え、有権者の政治選択を変化させるといった調査・研究について筆者は知らないが、そうした傾向は類推できよう。

 

 こうした三つの問題は、ある程度、互いに影響を与え合う関係にある上、構造的に地域で解決するには限界がある。そこで、今回の集会で一つの参考にしたのが日本における革新自治体モデルだった。

(P.106-P.110記事抜粋)

 

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