「介護の社会化」を阻む本当の原因
(季刊『社会運動』編集長 白井和宏)
【好評発売中】季刊『社会運動』2023年7月発行【451号】特集:長生きしたら、どうしよう? ―崩壊する介護保険制度をたてなおす
「絵に描いた餅」になる介護保険制度
介護保険制度が崩壊しつつある。負担が増額され、サービスは大幅に減少。「介護の社会化」を目的とした制度のはずだったが、再び「介護は家族の責任」になろうとしている。
欧米諸国では1970年以降、働く女性の急増に伴い、「ケア(高齢者介護、児童保育)は家族(女性)の責任」という時代から、「介護の社会化」へと移行した。
日本でも専業主婦の減少とパートタイマ―の増加もあって、ようやく2000年に公的介護保険制度が導入された。ところが、「ようやく家族・女性が介護から解放される」という願いも束の間の夢となり、再び、家族の責任へと逆戻りしつつあるのだ。
軍事費は11年連続で増え続ける
負担増とサービス減少の原因について政府は、「想定外のスピードで進んだ少子超高齢化のため、介護・医療サービスのニーズが高まる一方、深刻な介護人材の不足によって、今後は財源不足に陥る」と弁明。確かに2020年度の介護保険総費用は、20年前の約3倍の10兆円超にまで膨らんだ。
政府は、他方で、今後5年間の軍事費を1・6倍増やして、43兆円にするというのだから滅茶苦茶だ。
「家族主義・憲法改悪・反共」で共闘する自民党・日本会議・旧統一教会
それにしても何故、「家族の責任」に逆戻りするのか。実はそもそも、制度の導入前から自民党内では「子が親を介護する美風をないがしろにすることは許さない」といった反対意見が根強かった(注)。さらに安倍政権下で自民党は、戦前回帰を目指す日本会議と旧統一教会との癒着を強化した。三者は「家族主義・憲法改悪・反共(反左翼)」というイデオロギーで結び付き、夫婦別姓、外国人参政権、同性婚を認めず、世界の趨勢に逆行する政策を推進している。
2023年4月の統一自治体選挙では、旧統一教会との接点を認めた都道府県議の90パーセントが当選した。この病巣を切除しない限り、「介護の社会化」は永遠に実現しないことを日本の有権者はどこまで認識しているのだろうか。
(注) 亀井静香自民党政調会長の発言(1999年10月26日)
(P.10-11記事全文)