生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

②介護現場の声は、国に届いていない
(特定非営利活動法人 アビリティクラブたすけあい<略称NPO法人ACT>豊泉惣子・香丸眞理子・守屋 哲)

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異議あり! ケアプランの有料化

 

 「もう一つの大きな問題は、国がケアプランの有料化を進めようとしていることです」と香丸さんは懸念を示す。介護サービスの利用には必ず利用者の1割負担など自己負担が生じるが、これまでケアプランの相談と作成は無料でケアマネジャーに頼めた。要介護認定を受けた人が自立して生活を継続できるように介護サービスや地域社会資源につなげるために不可欠な相談業務だからだ。有料化されたら、経済的余裕のない人は、介護サービスを受ける最初のステップである相談とケアプラン作成すら諦めざるをえなくなるだろう。

 

 ACTは、2020年から東京都や神奈川県のワーカーズ、東京・生活者ネットワークなどと「介護の崩壊をさせない実行委員会」を立ち上げ、国への要望書の提出や院内集会の開催などを通して、厳しい現場の実態を訴え続けている。2022年度は、フォーラムや院内集会を開催し、相談とケアプランの作成は公費で全額負担すべきだと訴えた。厚生労働省は2024年度の法改正では見送ったが、今後も審議を続けて2027年度までに結論を出す方針だ。
 ACT・人とまちづくりでは2022年、他の居宅介護のケアプラン作成を担う事業者や介護サービス事業者を対象に、有料化に関するアンケートも実施した。「有料化を計画するのであれば、その前に利用者・家族の実態調査を国が実施すべきです」と香丸さんは言う。一方、守屋さんは「介護現場の声は国に届いていない」と指摘する。介護保険制度についての審議会では、介護だけでなく全世代型の社会保障の問題として議論され、現場の苦労を知らない経団連や学者などが介護給付を削減する算段ばかりを進めている。「高齢者が自立した質の高い生活を送ることができるように支援する」という理念は、議論から置き去りにされている。

(P.59-P.60 記事抜粋)

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