生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

③人材不足、コロナ禍でも、一人ひとりの尊厳を守り抜く
(社会福祉法人生活クラブ<風の村>副理事長 島田朋子)

【好評発売中】季刊『社会運動』2023年7月発行【451号】特集:長生きしたら、どうしよう? ―崩壊する介護保険制度をたてなおす

人材不足とコロナ禍による
複合的な悪循環

 

 現在、訪問介護の現場ではヘルパーがケアに使える時間が大幅に制限され、結果、いつも大急ぎでケアにあたったり訪問先と事務所の移動が多くなるなど負担が増大している。2000年の介護保険制度スタート当初は、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)がケアプランを作成するときは「この方にはどんなケアが必要か」を考えるのが基本だったが、法改正で制限が増え、いまでは、制度の条件や縛りに照らし合わせて「何をしてはいけないか」「どうしたら時間内で収まるか」といったことばかりに神経を使うようになった。
 こうした制度の締めつけに加えて深刻なのは、人材不足だ。ケアマネ、ヘルパー、施設の介護職員、いずれも担い手が足りない。ケアプランの作成ができない、ヘルパーがいない、通えるデイサービスが見つからないなど現状は厳しくなるばかりだ。島田さんは言う。「いまの日本社会では、介護は誰でもできる仕事だと軽く捉えられている節がありますが、本当は高度な技術が必要とされる専門職です。一所懸命に研修を重ねて学び、実践を通してやりがいを感じている職員たちの定着を促すには、やはり報酬の底上げが不可欠です。社会全体で抜本的に解決して、介護現場の質を担保していく必要があります」
 利用者にとって介護サービスを利用しなければその人らしい暮らしの継続が脅かされる一方、仕事がなければ介護事業の経営は成り立たなくなってしまう。加算の確認や算出の業務が事務負担を増大させ、事業所の運営を厳しくしているのも問題だ。この数年は新型コロナ感染症の影響により、通所サービスの利用控えで収益が減少し、様々な感染対策にかかる経費は増大し、経営をさらに圧迫している。

(P.64-P.65 記事抜粋)

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