④介護が必要になったら、死ぬのを待つだけなのか?
(社会福祉法人悠遊 前理事長 鈴木礼子)
【好評発売中】季刊『社会運動』2023年7月発行【451号】特集:長生きしたら、どうしよう? ―崩壊する介護保険制度をたてなおす
国は長寿など
望んでいないのが本音
かつて高齢者福祉は行政の「措置制度」であったが、2000年にスタートした介護保険制度で「お仕着せの福祉」から「ケアを選べる福祉」になった。そのために、介護保険料を払い、サービスを受ける権利が保障された。
鈴木さんは「介護保険制度を介護の社会化として歓迎し、主体的に介護にかかわれると思っていました。しかし、介護保険制度がどんどん改定され、いまでは市民は何をどう使っていいのかが分からないような状況に追いやられるのが現状です。多くの人が老後に不安も感じながらも、介護保険制度の活用に実感が持てず、問題意識も低いです」と話す。それは、超高齢社会の到来は確実なのに、国が介護保険の課題をつまびらかにしないまま、財源問題に終始してきた結果でもある。
また、2024年の改定に向けて、訪問と通所を包括報酬にすることや、介護保険サービスの利用者負担を原則2割とすることなどが提案されている。「お金のある人はサービスを利用し、払えない人は利用を減らすことになるでしょう。現在でも、いくらまでしか払えないから、それに見合ったケアプランにしてくださいと言う人たちがたくさんいるのです。これ以上、介護が必要になったら死ねと言われているのと同じ。国は国民の長寿など望んではいないのではないでしょうか。介護は家族で何とかして欲しいというのが本音なのかもしれません」と鈴木さんは、介護保険制度の改定がもたらす高齢者福祉の後退に怒りを表す。介護の切り捨てが起こり、介護の社会化という本来の方向に逆行する流れが進みつつある。
(P.71-P.72 記事抜粋)