生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

①介護保険制度は新自由主義的改革だった
(実践女子大学人間社会学部教授 山根純佳)

【好評発売中】季刊『社会運動』2023年7月発行【451号】特集:長生きしたら、どうしよう? ―崩壊する介護保険制度をたてなおす

「介護の社会化」で
見落とされてきた労働者保護

 

 制度がスタートした当初は、介護の社会化=介護が必要な人に対して具体的なサービスや物品を提供する「現物給付」として理解されてきました。
 しかし、実際のところ介護保険制度は、市場で利用者が「自由に選択し契約した」サービス分の介護報酬を、利用者に代わり事業所が市町村から代理受領するものであり、その意味で「現金給付」の制度なのです。
 特に訪問介護では、サービス時間に対してのみ給付がされる出来高払いのため、ケア労働に含まれる移動や待機時間、相談業務、キャンセルの際にも報酬を請求できない仕組みになっています。
 現金給付でケアや家事サービスを増やすことは、国にとって安上がりなんです。安い労働力が供給される限り、現金給付だけやっていれば、国は人件費にお金をかけずに済む。ニーズの多様化に応えるという名目で、現物給付から現金給付にシフトし、利用者にはサービスを自由に選択できる「権利」があるといいながら、ケアの質を維持できるような供給体制づくりには、お金が使われていません。

(P.78-P.79 記事抜粋)

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