生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

③サービス縮小が続く介護保険を大胆に見直す
(法政大学大学院公共政策研究科兼任講師 鏡 諭)

【好評発売中】季刊『社会運動』2023年7月発行【451号】特集:長生きしたら、どうしよう? ―崩壊する介護保険制度をたてなおす

認知症・特養・介護予防を
制度から外すべき

 

―これ以上のサービス縮小を食い止めるためにも、介護保険制度には、どのような改革が必要であると考えますか。

 

 私は介護保険制度の抜本的な見直しが必要であると思っています。具体的には、認知症・特別養護老人ホーム・介護予防については介護保険制度から外して、公費負担に移行することが必要ではないかと思います。

 

重度認知症には「面」のサービスを

 

 現状の認知症に対するサービスですが、認知症は病気ですから、医療で対応すべき部分と、生活を支援する部分とがあります。そして在宅で介護をするなら、認知症に対する医療の受け皿が地域になければ立ち行かないのですが、残念ながら現状はそうした受け皿が各地にあるという状況にはありません。
 また認知症の特徴として、もの忘れなど軽度な症状から不潔行為や徘徊などケアを必要とする重度な症状まで、非常に幅が広いことがあります。徘徊によって鉄道の線路に入り込んでしまい事故を起こしたとして鉄道事業者から損害賠償を求められた事件(注2)の例が象徴的ですけれども、こうした重度のケースに対し、現状ではサービスが十分とはいえません。グループホームやデイサービスはあくまで「線」のサービスに過ぎず、24時間、365日、目が離せない症状に対する「面」のサービスが圧倒的に足りないのです。
 またはじめに介護保険が社会保険制度であることの優位性として、サービスを自ら選べると言いました。しかし、認知症、特に重度の場合は、自らサービスを求めるということに結びつきにくい面もあります。そのため認知症については、保険制度よりむしろ、行政の責任で本人の生活を維持するためのプランを公的に作っていく必要があるでしょう。そのような「面」のサービスの仕組みを作っていくためにも、保険制度から外して、公費による支援に変えていく必要があります。

(P.101-P.102 記事抜粋)

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