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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

「未来志向に欠けた保守政権下の協同組合基本計画」(韓国・城南市 元・社会的経済政策官/市民セクター政策機構客員研究員 崔 珉竟<チェ・ミンギョン>)

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 韓国の社会的経済は2011年12月「協同組合基本法」の制定を契機として活性化してきた。協同組合基本法は、既存の個別法(農協法、水産業協同組合法、生協法など)で包括できない領域で事業を行う協同組合を設立する根拠法となった。協同組合基本法に基づいて設立された協同組合は2022年12月に2万3000組合を突破し、現在の組合員数は50万人以上と推定される(20年12月の実態調査では49・3万人)。そして、協同組合基本法により設立された協同組合が社会的企業、マウル企業、自活企業(注1)として認証を受ける事例も増加した。
 法制定以降、政府は協同組合に関する政策を総括し、協同組合の自律的活動を促進するための基本計画を3年ごとに策定している。法制度整備、教育・創業・販路などの間接的な支援政策、地域別の中間支援機関、情報システムの運営などに努め、結果として多様な分野で協同組合が設立された。これまでの第1~3次の基本計画の主な内容を〈表1〉にまとめた。
 ただし協同組合は量的に拡大する一方で、質的な成長は低い。協同組合の事業継続率49・5%、平均売上高2・9億ウォン、連合会参加率16・3%(2020年)というデータに表れており、協同組合のアイデンティティを理解し、実践する組織が少ないと言える。また、自治体(広域・基礎)と中間支援機関で支援業務が重複していることも問題だ。
今号では、協同組合基本法制定後10年を振り返り、さらに第4次基本計画(2023~25年)の概要を紹介する。そして、第4次基本計画で言う「10年以上堅実に持続する『成熟した協同組合』」を展望するための筆者の意見を示したい。

注1 社会的企業とは、協同組合、株式会社、NPOのなかでも特に社会的弱者のための事業を行う事業体、脆弱階層の人々自身が行う事業体。マウル企業とは、地域資源を活用した収益事業をし、地域社会の問題を解決して所得や雇用をもたらし、コミュニティの利益を効果的に実現する事業体。自活企業とは、「国民基礎生活基本法」(日本の生活保護法に相当)において貧困層の生活費の支給だけでなく、経済的自立のための活動を支援する事業推進を定めており、その事業推進の結果として生まれた事業体。

 

協同組合基本法制定後 10年間の成果と評価

 

①企業としての成長および雇用創出への貢献

 

 協同組合の中でも特に社会的協同組合の設立が急増し、事業分野も教育芸術、保健、科学技術など多様となっている。また協同組合が成長することで、特に脆弱階層の働き口が増加し、賃金など労働条件も改善された。とはいえ、相当数の協同組合が零細のままなので、協同組合が成長を通じて自生力を確保できるよう、競争力強化が必要である〈表2〉。

 

②コミュニティ問題を解決する様々な協同組合の登場

 

 特に社会的協同組合は介護サービス、科学、技術、教育、医療などの分野で共同体の問題解決に可能性を示した。しかし、協同組合による社会サービス事業への参加率は、社会的企業や社会福祉法人に比べて不十分だ。社会福祉施設と在宅長期療養事業に進出した協同組合は、22年で399組合であり、韓国の全施設数2万5297のうちの15・7%に過ぎない。

 

③協同組合間の連帯と協力が強化される基盤づくり

 

 協同組合の設立が増えるに伴い、同一業種間や地域間の連合会設立が増加した(2013年15→22年127連合会)。各連合会は共同調達、販売、教育などを通じて会員協同組合の活動を支援、利益を代弁しているが、協同組合の連合会参加率は低く、連合会の役割にも課題がある。
なお22年10月の基本法改正により、信協、生協が参加する異種協同組合連合会(注2)の設立が可能となった。22年12月時点で、一般協同組合連合会が93、社会的協同組合連合会が25、異種協同組合連合会が9、存在している。

 

④協同組合活性化のための法、制度基盤づくり

 

 協同組合の活動を促進するため間接的支援体系を明示し、異種協同組合連合会、優先出資(注3)、公共機関による優先調達などの制度が用意された。なお、社会的協同組合が政府の財政事業に参加したり、指定寄付金団体に認定されるためには、経営情報公示と透明性強化への努力が必要だ。

(P.120-P.123 記事抜粋)

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