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電力小売自由化―私たちは何を選ぶべきか(編集部)

季刊『社会運動』 2016年4月号【422号】 特集:市民が電気を作る、選ぶ

「安さ」に踊らされずに

 2016年の年明けとともに電力会社の宣伝が一斉に始まった。今年4月から消費者が自由に電力会社を選べるようになったからだ。どれも価格の安さを打ち出す宣伝ばかりだが、2015年8月の九州電力川内原発、2016年1月の関西電力高浜原発と、全国で次々と原発が再稼働される中で、「電気料金の安さ」だけが重要とは思えない。
 新聞やテレビ、雑誌では、世帯構成別に1カ月の電気代が7000円~2万円の家庭をモデルにして、どの電力会社が安いかを比較している。しかし、今までの電力料金は三段階になっており、電気の使用量が少ない人には安く、多い人には高い料金が設定されている。電気使用量の多い人にとっては、電力会社を切り替えれば電気代が安くなる場合もあるだろう。逆に、普段から省エネに努力して電気をあまり使わない人にとっては、「安くなる」というメリットは期待できないかもしれない。
 電力会社が示す新たな料金メニューには、他のサービスとの抱き合わせ販売や、宣伝文句には現れない契約期間や解約の条件等、消費者には理解しづらい様々な要件がある。消費者目線に立った情報がほとんど見当たらない中で、電力会社の宣伝だけで自分の暮らしに合った電気を選択するのは困難だ。そのため国民生活センターへの相談が急増しており、消費者庁も、宣伝に踊らされず冷静に判断するよう、正確な情報収集、契約内容の十分な理解、便乗勧誘への注意喚起を呼びかけている。
(記事から抜粋 P40~P41)

 

電気にも原料・原産地表示を

 食べ物を購入する時、原料や原産地を確認する人は多い。口に入れば何でもよいというわけにはいかないからだ。電気は、どこで誰が使っても同じ物質だ。とはいえ、福島原発事故を省みれば、電気を使う側も責任を持って、どこでどのようにつくられた電気かを分かって使いたい。しかし経産省は、そのような表示を義務付けていない。「お得な料金プラン」の宣伝は溢れていても、電源情報を開示している電力会社は少ない。だからこそ、消費者が電力会社に対し、「どんな電気を扱っているのか」と積極的に問い合わせることはとても意味のある行動となる。
 各種世論調査では、今でも6割の人が原発に反対している。電力自由化によって、その意思を消費行動で示すことができるようになるはずだ。もし、原発に頼らない電気が少し割高だったとしても、暮らし方を見直し、省エネをすれば、確実に電気代を下げ、自分の望む電気を使うことは可能だ。電力会社の宣伝に右往左往せず、次世代の子どもたちが安心して暮らせる日本にするためのチャンスにしよう。
(記事から抜粋 P43)

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