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②大雨・高温・・・気候危機が迫る 日本の食糧基地 北海道
(北海道新聞経済部編集委員 森川純)

【発売中です】季刊『社会運動』2023年10月発行【452号】特集:北海道で未来をさがす 国産牛肉が食卓から消える!?

地域によって特色が異なる
北海道の農畜産業

 

―はじめに、北海道の農畜産業の特色を教えてください。

 

 北海道の地図を思い浮かべてください。襟裳岬の辺りから北へ伸びる日高山脈を境に、東西で気候の特徴が異なります。おおむね西側は暖かく、東側が冷涼です。米の産地は大半が山脈の西側で、岩見沢市がある空知管内、旭川市がある上川管内が代表的で、札幌市のある石狩管内や道南も米どころです。
 一方、東側で米がとれるのはオホーツク管内の北見市周辺など一部です。緯度が高い北側ほど気温が低くなる傾向に加え、日本海からオホーツク海にかけて流れる暖流、千島列島の東側を通って根室、釧路沖から襟裳沖、三陸沖に向かって流れる寒流の親潮の影響も受けます。これらの要因が気温の差を生み、米作りの適否につながります(注)。

 

―畑作や酪農の分布はどうですか。

 

 テンサイ、ジャガイモ、小麦、豆などの畑作は、十勝とオホーツクなどが代表的な産地です。タマネギは北見周辺、富良野、岩見沢周辺など。酪農は冷涼な気候の根室管内や釧路管内のほか、十勝管内、北の宗谷管内などで多い。もちろん、畑作も酪農も道内各地にあり、いま、説明したのはおおまかに見た主産地の分布です。

 

―全国的に農業の担い手不足は深刻です。北海道の状況はいかがでしょうか。

 

 北海道でも担い手不足は進み、農家一戸当たりの耕地面積が拡大しています。経営体の数は1990年代に9万戸前後あったものが、2022年には3万3000戸に減りました。1経営体の平均耕地面積は10年間で6・7ヘクタール増え、2020年は30・2ヘクタールです。都府県の平均は2・2ヘクタールですから規模の大きさがわかります。十勝やオホーツクの畑作、根室管内の酪農など、特に法人経営では100ヘクタールを超える農場も多く、農業機械の大型化や自動化が進んでいます。作物の生育調査や農薬散布ではドローンも活躍しています。

(注) 北海道は道内に9つの総合振興局、5つの振興局を置き、その管轄区域は「管内」と呼ばれる。

 

資材高など「三重苦」の酪農
減反政策に左右される稲作・畑作

 

―昨今の酪農危機の状況は?

 

 酪農は未曾有の苦境にあります。生乳の生産量はこの間、増え続けていましたが、コロナ禍で需要が低迷し、2021年秋ごろから需給ギャップ(生産量と消費量の差)が拡大しています。22年以降、ウクライナ問題や円安で穀物飼料などの輸入資材は高騰し、肉用牛を肥育する畜産事業者の経営も苦しく酪農家が売るオス子牛の個体価格が暴落するという、「三重苦」に見舞われました。
 牧草中心に育てる家族経営の放牧酪農など一部は黒字ですが、大規模農家ほど畜舎の新設や搾乳ロボットの導入など設備投資への負担が重く、飼料高騰の影響も大きく受けます。工業生産では規模を拡大するとコストは下がりますが、酪農は逆なのです。赤字の農家はより多く牛乳を搾って収入を増やしたいのに、供給過剰のためホクレン農業協同組合連合会(以下ホクレン)は農家に生産調整を求めています。一部の農家が生乳を廃棄するニュースも流れましたね。ホクレンと乳業メーカーの交渉で乳価が引き上げられ、国や道は資材高騰対策のため助成をしていますが、赤字脱却には不十分とされ、離農が加速しています。一方で、乳価引き上げは小売り価格の上昇を招き、買い控えによるさらなる需要の減少も心配されます。

(P.73ーP.75 記事抜粋)

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