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【研修生体験】牛を飼いたい、と愛媛から研修に中春別に根をおろす酪農家を目指します
(松田直大+松田序美)

【発売中です】季刊『社会運動』2023年10月発行【452号】特集:北海道で未来をさがす 国産牛肉が食卓から消える!?

 2023年4月から、なかしゅんべつ未来牧場で研修生として働いている松田さん夫妻。愛媛県宇和島市から家族で北海道に引っ越した。ともに30代。4歳と1歳の子どもがいる。夫の直大さんは元消防士。妻の序美さんは元獣医師として家畜伝染病の予防に携わっていた。酪農を始めたいと言い出したのは序美さんだった。
 「獣医をしていながら現場を知らず、それでいいのかと葛藤がありました。自分で牛を飼ってみたいと興味が湧いて、夫に相談したんです」
 「ぼくは好きなように消防士の仕事をさせてもらったので、妻にもやりたいことをしてほしかった。両親は公務員を辞めることを心配していましたが、話すと励ましてくれて、職場の仲間からは『そんな生き方をしてみたい』などと言われました」
 北海道の役場に電話したり、インターネットで受け入れ先を探した。全国でもっとも牛の飼養頭数が多く新規就農支援も充実していたのが別海町。未来牧場では3年間の研修後、新規就農ができるのがわかった。コロナ禍で現地に行くのも難しく、メールで友貞さんとやりとりし、3月に現地入りした。
 「未知の分野で新入社員の頃のように頭がいっぱい。トラクターの乗り方や作業機械の取り付け方法まで、素人が新規就農できるようカリキュラムが組まれているんです。初めて牛に触ったのですが、気性の荒い子、人懐っこい子、一頭一頭に個性があることに感動しました。楽しいのは搾乳ですね。丁寧に世話をすると素直に応えていっぱい乳をだしてくれます」と直大さん。
 1年目2年目で基礎固め、3年目に就農できるかどうかの見極めがある。獣医としての知識は十分に持っていた序美さんも「実際にやってみると思いどおりにいかないことも。子牛に飲ませるミルクもちょっとした温度の変化で下痢をしてしまう。寒いとミルクの温度が下がるのも早く、暑いと逆に下がらない。その日の気温も考えながらミルクを作るのですが、まだまだ経験不足ですね。子牛は一頭ずつ小部屋で飼っていて、中に入ると顔を私にこすりつけたり、本当にかわいい」
 中標津空港から車で15分ほど、幼稚園や学校、商業施設、病院なども充実して暮らしやすいそうだ。子育てにも適していると松田さん夫妻は話す。
 「家族を大事にしたいというのも、ここに来た理由の一つ。恵まれた自然の中でのびのびと育てたい。上の子は新しい友だちができ、牧場の牛に名前をつけてかわいがっています。将来的には放牧を主体に、中春別に馴染める酪農家になりたい。骨を埋める覚悟で来たので、地域の同年代の牧場経営者ともつながりを作って、地域の酪農のために長く経営できるよう工夫していきたいですね」

(P.60-P.61 記事全文)

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