生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

Case②<ソーラーシェアリング>
地元の資源を活用し、自立・循環型の地域社会をめざす
(さがみ生活クラブ生活協同組合理事長 矢野克子/㈱さがみこファーム代表取締役社長 山川勇一郎)

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2023年5月、「生活クラブでんき」に新たな電気の生産者が加わった。神奈川県相模原市の「㈱さがみこファーム(以下、さがみこファーム)」だ。同社は相模原市の中山間地耕作放棄地を利用して、ブルーベリー農園を開園。市内初の「ソーラーシェアリング」を行っている。そのさがみこファームと連携して様々な活動を展開したいと語るのは、さがみ生活クラブ生協理事長の矢野克子さん。どの様な取り組みを展望しているかを聞いた。

 

地元の電気の生産者とつながりたい

 

 さがみ生活クラブ生協理事長の矢野克子さんは、2021年、生活クラブ連合会が発行する情報紙『生活と自治』で、さがみこファームによる「ソーラーシェアリング(営農を継続しながら太陽光発電を行う設備。太陽光で電気と農作物を同時に作る営農型太陽光発電)」の取り組みを知った。


「『食とエネルギーの自給』と紹介されている記事を読んで、私たちが目指すところとピッタリだと思いました。同じ相模原市のなかで、耕作放棄地を活用して再生可能エネルギー(以下、再エネ)に取り組んでいるさがみこファームがあることへ期待が広がり、自分の住む地域で電源開発ができるという希望が広がりました。「生活クラブでんき(注)」の生産者になってもらいたいという密かな願いはありましたが、その時点ではまだ『妄想』の段階。一足飛びに進むとは思ってはいませんでした」と話す。


 そこで矢野さんはさがみこファームとつながる機会になればと、さがみ生活クラブの次年度活動方針を検討する学習会の講師にさがみこファームの代表取締役社長の山川勇一郎さんを招いた。


 山川さんは、かねてから生活クラブの目指す社会像に共感する部分が多いと感じていたそうだ。また「㈱生活クラブエナジー(以下、生活クラブエナジー)」代表取締役社長の半澤彰浩さん(生活クラブ・神奈川 専務理事)とも、以前から様々な再エネ事業を通して顔見知りであったという。「生活クラブとのタイミングと方向性がうまく噛み合ったという感じがします」と、山川さんは語る。

(注)㈱生活クラブエナジーが扱い、生活クラブの組合員に供給される電気。生活クラブでは、㈱生活クラブエナジー、生活クラブエネルギー事業連合、生活クラブ各単位生協と総合的な取り組みによる再生可能エネルギーの推進と電気の共同購入を行っている。

 

電気の生産者と組合員が連携した地域づくり

 

 矢野さんが「食とエネルギーの自給」というワードにインスピレーションを感じたのはそこに生活クラブ組合員活動の方向性を見出したからだと話す。これまでの組合員活動は、「食」への関心から、自分たちが必要とする消費材(12ページ参照)を作り出し、その消費材を利用する仲間を増やす活動が中心だった。


 「大きく変化する社会状況のなかで、暮らしの課題は食だけではないことを、活動しながら学びました。食とエネルギーの自給や地域の課題を自分たちで解決するために、身近な人や団体と連携を深めていく必要があると考えていました。さがみこファームとの出会いは、それが実現できるチャンスではないかと考えたのです」。組合員活動は暮らしの課題解決のためにあることから、電源開発から地域づくりにつなげられないかと思ったのだ。


 活動方針を検討する学習会では、初めてソーラーシェアリングの話を聞く人が大半。その時の様子を生活クラブ・神奈川の機関紙『えぽ』(2023年7・8月号)にさがみ生活クラブの組合員が以下のような意見を寄せている。


 「電気の生産者と組合員が連携して地域をつくろう! 『さがみエリアに電気の生産者が生まれる』と情報が届いたとき、居合わせた組合員の喜びの声が部屋いっぱいに広がりました。エネルギーの地産地消の実現に、期待が高まっています。(中略)私は生活クラブに加入して、食だけでなく電気もつかう人が選ぶべきものなのだと知りました。(中略)体験農園が、地域の方が集い学べる居場所になったら楽しそう! 夢が膨らみます」


 「原料やつくり方について納得して利用したいという思いは電気も同じ。さがみこファームとの連携は『コンセントの向こう側が見える』という強みになっていく」と矢野さんは言う。


 「これは地元に暮らす組合員の特権でもあります。そのような動きが、食だけに留まらない『つながるローカルSDGs』を自分たちでつくっていく実践の面白みがあると思っています」

(P.70-P.73 記事抜粋)

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