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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

①脱・新自由主義の一手となる社会的連帯経済(明治大学名誉教授 栁澤敏勝)

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社会的連帯経済の促進こそがSDGs実現への最適解

 
 

―社会的連帯経済とは具体的にどのような活動を指しているのでしょうか。

 
 
 日本における「社会的連帯経済(Social and Solidarity Economy  以下、SSE)」という言葉、概念の認知度はいまのところ非常に低いと言わざるをえませんが、世界に目を向けてみると、その影響力は確実に広がっています。国際社会の一潮流となりつつある社会的連帯経済、SSEとは何なのか。国連および国際労働機関(以下、ILO)の決議を通して見ていきましょう。
 ILOでは、2021年からディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)とSSEに関する議論が始まっていました。そして2022年の総会で、「ディーセント・ワークとSSEに関する決議」(注1)が採択されます。そこにはSSEが具体的に定義されています(表)。
 
 
 ILOの決議を受け、2023年4月の国連総会では、「持続的開発に向けたSSEの促進」という決議がなされています。特に注目したいのは、前文にある以下の指摘です。
 
 「SDGs(接続可能な開発目標)の達成に向けてSSEが貢献していること、とりわけ雇用、ディーセント・ワーク、健康・介護・教育・技能訓練などの社会サービス、環境保護、ジェンダー平等、女性のエンパワーメント等々の達成に貢献している」
 
 だからこそSSEを推し進めていく必要があり、それを前提にしてSDGsの実現を目指す必要があるのです。
 
 この総会では、SSEを推進するための方策の整備を、①加盟国、②国連カントリーチーム、③金融機関・開発銀行、④国連事務総長に求めています。注目したいのは、3番目に金融機関・開発銀行を名指ししている点です。SSEを推し進めていくうえでの金融的なサポートを考えなさいと言っているわけです。
 
 「持続的開発に向けたSSEの促進」という決議について国連は、「SSEの推進にとって歴史的瞬間である」と言っています。その前になされたILOの総会決議も「SSEへの道が開かれた」と表現されており、SSEを取り巻く国際的なムーブメントの兆しが感じられます。
 
 
(注1)ディーセント・ワークと社会的連帯経済に関する決議(2022年6月10日) 
 
 

社会的連帯経済の促進に必要なのは国際的な連携と公・共のパートナーシップ

 
 

―2023年5月には、セネガルのダカールでSSEに関する国際大会「GSEF2023ダカール大会」が開催されました。この会の活動と意義について解説をお願いします。

 
 
 まず、GSEF(グローバル社会経済フォーラム)について説明します。GSEFはSSEの活動を広めるための国際的な会議体であり、韓国・ソウルを本部に発足した非営利の国際組織です(現在の本部事務局はフランス・ボルドー)。グローバルなSSEのネットワークを目指し、2013年11月に発表されたソウル宣言(注2)に基づき設立されました。その主体である協同組合、社会的企業、慈善団体、自治体、NPOなどによって構成されます。
 
 日本ではまだ加盟する団体や自治体は少ないですが、生活クラブ運動グループを含む私たち「社会的連帯経済を推進する会」は、GSEF設立時から、前身の「ソウル宣言の会」の名で加盟し、日本におけるSSEの普及拡大を担ってきました。
 
 GSEFの目的は、大きく二つあると考えています。一つは、SSEを推し進めていくために「国際的な連携」を推進すること。
 
 もう一つの目的は、「公・共のセクターのパートナーシップ」です。公的なセクターの基本は、国ではなく地方自治体です。それと、様々なSSE組織―協同組合や、各種NPO・NGOなどが手を結び、社会のあり方を変えていこう、その実践のための学び合いをしようというのがGSEFという会議体です。
 
 2023年のダカール大会には、250以上の都市、70カ国5000人以上が参加し、各国の大臣クラスの政治家による討論会や、地方行政を担当する首長(ボルドー市長、モントリオール副市長、ソウル市の一区長など)による討論会、経済協力開発機構(OECD)、ILOなど国際機関の代表者などによる討論会が行われました。
 
 過去の大会には、東京都世田谷区長など、日本の自治体の首長も何人か参加したのですが、2016年のモントリオール大会以降は私の知る限り、日本の行政マンや政治家は参加していません。2025年に開催されるフランスのボルドー大会には、ぜひ日本からも首長が参加できるような仕掛けを考えなければと思っています。
 
 

 ―ダカール大会で生活クラブ運動グループは、山形県庄内地方で地域コミュニティの強化と雇用を創出し、サステイナブルな社会づくりを目指す「庄内FEC自給ネットワーク」(生活クラブ連合会)

 

(注3)、神奈川県座間市で、働いた経験のない人や仕事を辞めて時間が経ってしまった人などを対象に就労準備支援を行う「はたらっく・ざま」(注4)の活動を紹介しました。これについてはどう評価されていますか。

 
 
 「庄内FEC自給ネットワーク」については、SSEこそがSDGsを達成するために最も適した社会経済モデルだという、国際社会の認識に沿った実践そのものといえます。「はたらっく・ざま」は、公的なセクターと協同組織とのパートナーシップを追求する事例ですね。世界的に見てもすごいことをやっている。大いに誇っていいことだと思います。
 
(P.81-P.85 記事抜粋)
 

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