再生可能エネルギーでまちづくり(宝塚すみれ発電代表取締役 井上 保子)
怖いもの知らずで発電所を建設
2012年月、宝塚市の北部、西谷地域にわずか・の市民発電所「宝塚すみれ発電所1号」が完成した。一般家庭3軒分に相当する電気を生み出す太陽光発電である。5時間かけて作り上げた「手作り発電所」が発電するのだろうかと、出来上がるまで半信半疑だったが、見事に発電しているのをモニターで見た時には、「どうだ、私たちでも電気が作れる!」とうれしさがこみ上げてきたのを覚えている。
発電所を作るに至った理由は、長い間の市民活動で培った「あきらめの悪さ」かもしれない。1981年に発足した市民団体「原発の危険性を考える宝塚の会」のメンバーとして活動してきた仲間が核となって、2012年5月にNPO法人新エネルギーをすすめる宝塚の会(通称REPT)を立ち上げた。それはむろん、2011年3月の福島原発事故がきっかけだった。事故後の私たちの行動は早く、2011年6月には「再生可能エネルギーを最大限に活用してまちづくりを行ってほしい」という要望と請願を、宝塚市長と宝塚市議会に送った。請願が採択されて、私たちは行政との話し合いの場を得たのである。とはいえ、いきなり「再生可能エネルギー」という切り口で話を持って行っても、行政は何をどうすればよいのかわからないようだった。講演会の共同開催などを重ね、2012年4月には新エネルギー推進課が新設されると聞いて私たちは喜んだ。そして私たちも今後は市役所と一緒にやっていくのだという決意のもとに、REPTを立ち上げたのだが、今までそんなに親密に交流してこなかった行政とどう向き合えばよいのか、私たちも大いに悩んだ。
さて、「市民発電所を作る」と初めに口にしたのは中川慶子理事長だった。その実現には、市内の太陽光発電の事業者が仲間に入ったことが大きい。道路に出ている看板だけを頼りに、「ここの人だったら話を聞いてくれるかもしれない」と飛び込み営業をかけたのは、怖いもの知らずの市民力のたまものであると思う。結局、それが「面白い!」と勢いがつき、手作り発電所建設へとつながった。
(記事から抜粋 P102~103)