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市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

②地域を元気にする有機給食(専修大学人間科学部教授 靏(つる) 理恵子さん)

【新刊】季刊『社会運動』2024年7月発行【455号】特集:飢える社会が来た ー生産者と消費者の対等互恵で生きのびる

「公共調達」の観点で考える有機給食の定義


―重要なのは食の安全だけではないという靍さんの考えからいくと、「有機給食」はどのように定義されているのでしょうか。


 農薬や化学肥料を全く使っていないものしか認めないというのはちょっと違うと思います。もちろん、単にそれが手に入りにくいということもありますが、地域の中で農業をやっている人たちが、どんな農業をしているのかを見ていくことが重要です。
 地場産の地産地消の給食に食材を納めている慣行農家の方たちも、大量のものを納めるわけではないので、自分の家の家庭菜園の延長のような形で、なるべく農薬や化学肥料を使わないで作っているケースも少なくありません。慣行農家といえども、できれば農薬は使いたくないのです。でも市場に出荷するものは規格が決められていて、使わざるをえないのが現実でもあるということを調査のなかで私は実感していました。そのため、有機給食は「できるだけ農薬や化学肥料を使わないで栽培されたもの」を含む定義にしています。
 また小中学校だけでなく、幼稚園や保育園での取り組みも多いですし、病院や福祉関係の施設、あるいは刑務所や役所の食堂など、公的な機関や施設で提供される給食も視野に入れたいと思っています。環境によい製品を公共調達するように、有機給食も公共調達という観点から考えた方がいいと思っているのです。
 こうした定義をアバウトすぎると批判する方もいないではないですが、ゼロか百かで考えるのは意味がないのではないかと思います。慣行農家の方も好きで農薬を使っているわけではなく、地域に無用な分断は持ち込まない方がいいでしょう。実際、有機給食を始めるにあたって、地域の中で有機農業を追求している人も慣行農家も両方を仲間に引き込んで、一緒に納めていく形にしていくことが必要です。すると、地域のなかで農業をどう残し、どう発展させていくかを考えていくベースになるんですね。岐阜県の白川町などではまだ始まったばかりですが、そうした動きも生まれています。

(P.102-P.104記事抜粋)

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