生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

 かつてイラク戦争(2003~11年)取材の際、一人の米兵が私に言った。
 〈戦場で最も危険なことは、木を見て森を見ないこと。真の敵を見誤れば、足元が崩れても気づかず手遅れになる〉
 あの頃のマスコミ報道も、今と同じ善悪二元論一色だった。悪魔化された為政者を潰す〈正義の戦争〉を言い訳に、数え切れない程の爆弾がイラクに降り注ぎ、多くの市民と米兵が犠牲になった。コソボやアフガニスタン、リビアやシリアでも繰り返されてきたパターンだ。共通の敵の存在は、私達を感情的に団結させる一方で、深い思考と広い視野を妨げ、その本質を見落とさせてしまう。

 そして今、これと同じパターンで「食糧危機」が煽られる中、今度は世界中の「食と農」が、一握りのグローバル企業と投資家に、略奪されようとしているのをご存知だろうか。
 ロシアのウクライナ侵攻の時は、悪魔化されたロシアへの制裁で、日本を含む西側諸国は巨額の代償を支払わされた。グローバル世界で資源大国を制裁すれば、当然非資源大国側が犠牲になる。プーチン大統領は、即座に制裁に参加した「非友好国リスト」(40カ国)を作成し、穀物や肥料、エネルギーの輸出を停止した。穀物輸出大国のウクライナ、ベラルーシ、ハンガリーも後を追い、小麦に石炭、キャノーラの先物価格が高騰、数十%に達した食糧インフレ率が、世界中で〈食と農、エネルギー政策の大転換〉を引き起こしたのだった。

(P.122-P.123記事抜粋)

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