異種協同組合連合会は協同組合の"アベンジャーズ"(崔 珉竟<チェ・ミンギョン>韓国・城南市 元・社会的経済政策官/市民セクター政策機構客員研究員)
国際協同組合年を目前にした2011年末、協同組合基本法が制定されたことは、協同組合にとって大きな変化となった。法制度の中に自発的な参加、地域社会の変化、経済的自立、協同組合の生態系の構築を位置づけることで、資本主義の矛盾を解決し共同体を再生する時代を迎えることになったのだ。
制定後に法人格を獲得した新生協同組合は、多くの試行錯誤を経験しながら少しずつその枠組みを整えていった。それらは1960年代に始まって定着した信協と、90年代以来の生協の経験から、事業継続力を強化する方策や社会的な価値を実現する運動について大いに学んでいった。こうして基本法上の(一般)協同組合と社会的協同組合の数は大きく増えた。だが、現状では質的な成長は相対的に不足している。
まず、大多数の協同組合は零細なので、販路拡大や資本調達に困難を抱えている。
また、協同組合間で協力するための連合会設立の制度にも課題があった。現状は同種の協同組合同士による連合会のみが設立可能だった。例えば、(一般)協同組合は(一般)協同組合同士、社会的協同組合は社会的協同組合同士のみで連合会設立が許された。また、個別法上の協同組合(生協、信協など)は基本法上の協同組合とともに連合会を構成することができなかった。
異種協同組合連合会をつくる機運
協同組合間の協同と連帯に対する規範の必要性は、一般的に「協同組合のアイデンティティに関する国際協同組合連盟(ICA)声明」第6原則(協同組合間協同)で言及されている。韓国では協同組合基本法第8条がそれに対応しており、協同組合などは国内外の他の協同組合、他の法律による協同組合、国際機構などとの相互協力、理解増進、共同事業開発などのために努力すること(第8条1項)、このような目的達成のため必要な場合、他の協同組合や他の法律による組合などと協議会を構成・運営することができる(第8条2項)と規定する。
このような規定があるにもかかわらず、前述のように種別を超えた連合会をつくることができなかった。しかし、規模の小さな基本法上の協同組合と、規模化を達成した個別法上の協同組合が連帯・協力できれば、単独での活動以上に効果を生み出せると期待できるため、 同種の協同組合だけでなく、異種の協同組合同士で連合会が設立できるよう法的根拠を求める声が高まっていた。
協同組合の事業と価値を広げる活動をしてきた全国協同組合協議会が中心となって、討論会開催や政府機関と議論した結果、韓国の国会は2020年3月6日「協同組合基本法一部改正法案」を議決し、10月1日から異種の協同組合間でも連合会を構成できるようになった。
つまり、①協同組合と社会的協同組合相互間の連合会と、②協同組合基本法による協同組合と、生協や信協など個別法による協同組合間の連合会の設立が可能となった(ただし信協の場合、信協法の改正が必要)。
改正内容を確認してみよう。
協同組合基本法第2条(定義)に、5項「「異種協同組合連合会」とは、この法律または他の法律による協同組合が共同利益を図るために設立した連合会をいう」を新設した。
第4条(法人格と住所)では、「①協同組合・協同組合連合会および第115条の8第1項の適用を受ける異種協同組合連合会(同条第2項に該当する場合を除く。以下同じ)は、法人とする。〈改正2020.3.31.〉
② 社会的協同組合・社会的協同組合連合会および第115条の8第2項の適用を受ける異種協同組合連合会は非営利法人とする。〈改正2020.3.31.〉」と改正した。
異種協同組合連合会の設立は、協同組合の本質である協力と連帯の活性化はもちろん、それぞれの組合が直面する特有の環境的限界を克服することにつながるだろう。具体的には、小規模の協同組合は販路拡大と資金調達を、個別法協同組合は販売または流通で協業を期待できるようになった。
また、事業遂行・人材養成・創業支援など多様なプログラムを共同で遂行することができ、協同組合生態系が韓国社会により広く深く定着することになるだろう(資料1)。
新しく導入される制度であるだけに、安定するまでは時間が必要である。さらに、信用協同組合法の改正と、他の個別法で規定される加入許容など、追加的な法改正も必要だ。
異種協同組合連合会の代表的な事例
異種協同組合連合会は、5つ以上の基本法上または個別法上の協同組合によって設立される。2024年3月末現在、異種協同組合連合会は全国で12カ所存在する(資料2)。そのうち代表事例を4つ紹介したい。
■大邱慶北ローカルフード異種協同組合連合会
地域のローカルフードに関連する6つの協同組合、2つの社会的協同組合、2つの生協を含む計10組合で構成されており、地域内の安全な食べ物を供給するために設立された。主な事業は、
・ローカルフード直売所の出荷生産者の農産物を多様に確保し、安定的に供給する。
・物流の革新的な改善と費用節減(規模の経済)のため、共同物流体系の構築と共同研究、調査事業を行う。
■水原市異種協同組合連合会
2021年3月、水原地域の協同組合活性化と生態系造成を通じて持続可能な都市を作るために28組合が集まって創立した。協同組合と社会的協同組合だけでなく、生協、信協まで参加した異種協同組合連合会の「完全体(全員集合するさま)」ということで意味がある。
■発達障害者異種協同組合連合会
2022年12月、発達障害者を支援する全国の21の協同組合が結成した。発達障害者の社会進出、ケア、文化芸術など多様な活動を支援することを通じて、次のことを目指す。
・発達障害者が平凡な日常を享受できるような社会の雰囲気を造成。
・競争と効率という既存の経済システムを、協同・連帯・平等に基盤を置いた人中心経済に。
・発達障害者だけでなく、他の少数者との連帯を通じて、誰も疎外されず差別を受けない協同組合共同体を指向する協同組合のアイデンティティ強化。
・協同組合第7原則に基づいて、持続可能な社会のために、より多くの社会的経済や市民団体、市民との連帯を強める。
■iNライフケア異種協同組合連合会
2022年3月、消費者生活協同組合(アイコープ生協、尚志大学校生協など98組合)、生産者協同組合(4組合)、社会的協同組合(8組合)など110の協同組合が参加した、韓国最大規模の異種協同組合連合会だ。気候危機、不平等と格差、少子高齢化、地域消滅、慢性疾患の急騰など環境・健康を脅かす時代的課題を解決し、環境にやさしい生産と消費の実践運動を、協同組合間の協同による新しい事業モデルとして提示するために創立した。
iNライフケアは、二酸化炭素排出量の低減とファイトケミカルが豊富な生産農法、気候危機と地球環境のための消費者の公益的キャンペーン、健康な生活習慣を通じて病気を予防する医療サービスなどの分野を中心に活動を繰り広げていく計画だ。
異種協同組合連合会制度が活性化されれば、協同組合のスケールアップにつながる。社会的経済の外縁を広げながら、今後互いに異なる協同組合が集まってどんな姿を見せるか、期待が膨らむ。しかし、異種協同組合連合会が将来を展望していくためには、解決しなければならない課題が山積している。
一つは法制度の問題である。ヨーロッパでは、協同組合連帯基金や金融機能に関する法制を備えているが、韓国ではまだそうした規定を法に盛り込めておらず、いわゆる「法の未完成」状態である。そのため協同組合基本法を改正しなければならない。
そして、異種協同組合連合会が単なる宣言的意味の組織体ならば、意思決定も事業の共同開発も難しく、したがって大きな効果も期待できないだろう。望まれるのは、異種協同組合間の協同に対する全国単位の協同組合協議体が、小さくは協同組合の自律的監査機関や異種協同組合間の相互支援体系、大きくは協同組合の創立および持続可能な発展を担保することだ。そして、金融機能を持つ社会的資本、協同組合連帯基金ができることである。
市民社会と政府、市場を説得し協力する戦略を立てなければならない。そのためには、協同組合セクターを結び、協力と連帯の戦略が特に重要になるのだ。
(P.136-P.142記事全文)