●韓国協同組合運動100年史の執筆者メッセージ
①第21代韓国協同組合学会長 金 亨美
【新刊】季刊『社会運動』2024年10月発行【456号】特集:社会的経済に向かう韓国市民運動 ー『韓国協同組合運動100年史』翻訳出版記念
歴史を学ぶことは未来への種を撒くこと
第21代韓国協同組合学会長
金 亨美
この度、市民セクター政策機構から和訳『韓国協同組合運動100年史』が出版されることを筆者の一人としてとても嬉しく思います。まず、翻訳者のみなさまと翻訳出版を推進した市民セクター政策機構のみなさまに深く御礼を申し上げます。私も翻訳の経験があり、それがいかに骨のおれる作業かは少し分かります。
情報革命と映像メディアの凄まじい発展に伴い、本を読まなくなった今日に、学術書のような本を翻訳出版することは決してたやすくないはずです。それでも、生活クラブ生協が、韓国の独裁政権の時からいち早く韓国の信用協同組合と生協との交流を通じて、韓国の協同組合運動の発展に貢献してきたごとく、今回の出版プロジェクトも、日韓協同組合間交流と連携を新次元で進めることに貢献するだろうと信じています。
私は若い時に自国の近現代史についてはあまり勉強したくありませんでした。読者の方々も想定しやすい苦難の歴史ばかりに目が向いたからです。ところが、 様々な国の協同組合を研究することになってから、歴史は一方通行ではなく、お互い影響し合う流れをもつくること、また多くの制約の中でも人びとは違う未来への種をつねに撒いてきたことに気づきました。
例えば、2012年12月に「協同組合基本法」が施行されるまで、働く人びとの協同労働は制度的に認められませんでした。それでも、韓国の労働者、構造的な貧困に苦しめられた都市の住民たちは、1970年代から制約の多い環境の中で協同労働を試みて、多くの実践と課題をいまの私たちに残しました。彼・彼女たちの実践を促したアイデアやモデルがどこから来たかを調べると、日本を含む海外の事例や先人たちにたどり着けます。
過ぎ去った歴史はどうにもならないし、消すこともできませんが、未来への種を撒くことはできますし、それは歴史を学ぶ人びとにもっとも得意なはずです。この本を読まれる方々に、このような筆者たちの観点を感じ取っていただけたら何よりです。
(P.20 記事全文)