②生協運営における業務委託ワーカーズ・コレクティブの可能性 ―パートナーとして、未来に必要な事業の実現
<座談会>
藤井恵里さん(ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン(WNJ)代表)
篠崎みさ子さん(生活クラブ生協・神奈川理事長)
瀬戸久子さん(労働者協同組合ワーカーズ・コレクティブ・リアン代表理事)
【まもなく発売】季刊『社会運動』2025年1月発行【457号】特集:いまこそ、協同組合の出番 2025年は国際協同組合年
地域の暮らしを支える仕事をみんなで考え、みんなの力で実行
藤井 ワーカーズは、出資・経営・労働をみんなで担う事業体です。上意下達の組織ではなく、現場のことから経営まで、かかわる人みんなであらゆることを話し合って決めていくのが特徴です。一般の「商品」への対案が生活クラブでは「消費材」であり、「雇用労働」の対案が「ワーカーズ」です。
1982年に神奈川県横浜市で第一号が誕生し、その後、生活クラブの消費材の配送、福祉、食、居場所づくり、保育・子育て支援などの分野で地域に必要とされる事業を形にしながら各地に広がりました。
誕生から35年経った2017年、400団体1万人を超える就労者と125億円の事業規模に成長しましたが、働く人の協同組合を規定する法律ができないままで手続きや資金調達にあたっての苦労が絶えませんでした。紆余曲折の法制化運動が実り、2022年10月に労働者協同組合法が施行されました。この運動を押し進めてきたのが「ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン(以下、WNJ)」です(発足時「全国市民事業会」)。現在、私は代表として運動推進、ワーカーズの社会化、労働者協同組合運動、政策づくりや各地でのワーカーズの設立伴走支援に携わっています。
ワーカーズは「自分たちが暮らす地域をどうしたいのか」というまちづくり政策に基づいて、必要な機能を事業として生み出していく主体的な運動です。今日は、組合員、ワーカーズ、専従職員、三者の関係性や積み重ねてきた学び合いについて、みなさんと共有できたらと思います。
瀬戸 私たち労働者協同組合ワーカーズ・コレクティブ・リアン(以下、リアン)は生活クラブ生協・長野で個別配送(以下、個配)が始まるのを機に配送ワーカーズを立ち上げ、昨年2024年4月に業務をスタートしました。かつては消費材を受け取るための「班」で、先輩から新しい人に「生活クラブってね」「消費材ってね」と語り継いできたのが、高齢化や就労事情でそれが難しくなりました。生活クラブでは、人と人の関係性のなかで教え合い・学び合うという「共育(ともいく)」を大切にしてきましたが、その共育の場が弱くなっているのが現状です。ワーカーズ運動がそこを補いながら、今後の地域の方向性を話し合い、新しい道を切り拓こうとしています。
立ち上げを機にWNJの学習会や全国会議に参加し、こんなに多くのワーカーズが各地に存在し、みなさんすごく元気に楽しく働いていることを知りました。ただ実際に「中期計画として政策を明確に」とか「マルチステークホルダー型で」と教わっても、職員も組合員もまだ理解しきれていないのが現状です。
篠崎 ワーカーズ発祥の生活クラブ生協・神奈川では、「必要なものは自分たちが参加して作り出そう」という考えが根付いています。現在、配送、店舗、介護、保育、共済、清掃などの事業を展開する6つの業務委託ワーカーズがあります。例えば、ワーカーズで働くメンバーが子育て中でも働けるように、組合員に呼びかけてワーカーズと一緒に自主保育をつくるなど、困りごとの解決やニーズへの対応のために議論しながら取り組んでいます。託児は若い人のワーカーズへの参加につながっています。また、惣菜・仕出しを事業とするワーカーズのお弁当や惣菜を組合員へ配達するために、業務委託の配送ワーカーズから新しい配食ワーカーズが誕生しました。
(P.99-P.101 記事抜粋)
![記事タイトル:生協運営における業務委託ワーカーズ・コレクティブの可能性 座談会:藤井恵里 氏(ワーカーズ・コレクティブ ネットワーク ジャパン代表) 篠崎みさ子 氏(生活クラブ生活協同組合・神奈川 理事長) 瀬戸久子 氏(労働者協同組合ワーカーズ・コレクティブ プリマヴェーラ 代表理事)](https://cpri.jp/wp-content/uploads/2024/12/P0980001-1.jpg)