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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

 この10月から、かつてドキュメンタリー映画にもなった、デンマークの三ツ星レストラン「ノーマ」が、京都市内のホテルで、期間限定の出店をしている。ノーマが注目される最大の理由は、その発酵技術の活用だ。今や世界的ブームになっている発酵の市場規模は、2033年までに1兆ドル(約152兆円)を突破する。動物性食品を摂らないヴィーガンの人々を初め、都市部を中心に健康への関心が高いアメリカでも注目されており、10月末には、販路拡大を狙った長野県が、ニューヨークで信州味噌など県産発酵食品イベントを開催した。阿部守一県知事は、長野の発酵食品を通して日本の伝統を世界に広めると自信を見せる。

 だがその一方で、今国内では我が国の発酵食品とその多様性が危機に瀕していることに、どれほどの国民が気づいているだろう?

 帝国データバンクによると、今、過去最多のペースで日本から漬物店が消えている。全国でその多くが廃業を決意するきっかけになったのは、2021年に一部改正され、2024年6月に猶予期間が切れた「食品衛生法」だ。これによって、今後新しい条件で、営業許可をとった漬物以外は禁止となった。

 この加工場の条件がとても細かい。水道はセンサー式か足や肘で押すスイッチのみで、手でひねるものは不可だ。作るテーブルはステンレスはいいが木製はダメ、床もコンクリや板貼りはダメ、着替えをする更衣室もついてなきゃいけないなど、かなり厳しいのだ。道の駅や地域の直売所に卸している小規模の漬物屋には、大金をはたいて加工場を作る余裕はないだろう。だがこれは奇妙な話だった。そもそもこうした作業場設置を義務付けた背景は、ある一業者の漬物による食中毒事件だったからだ。肉や魚に比べてはるかに食中毒の発生率が低い野菜の漬物に、何故ここまで過剰な規制を入れるのか。

(P.148-P.150 記事抜粋)

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