●ナタネの新品種「ペノカのしずく」
(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門野菜花き品種育成研究領域 上級研究員 川崎光代/米澤製油株式会社 取締役専務 森田英之/米澤製油株式会社 東京出張所所長 安田 仁)
【まもなく発売】季刊『社会運動』2025年4月発行【 458号】特集:食の自治の可能性を拓く 瀬戸際にある飼料とNON-GMO
米澤製油株式会社からの報告
ペノカのしずくの搾油結果
森田英之さん
2023年に「ペノカのしずく」の作付けが北海道で本格的開始され、収穫されたナタネが米澤製油に入荷しました。試験的に搾油した結果、エルシン酸はほぼ検出されませんでした。脂肪酸組成に関しては、「ペノカのしずく」はオレイン酸成分が65パーセントで「キザキノナタネ」よりも若干高く、リノレン酸成分は約7パーセントでした。
ナタネに含まれる油を食用油にする際の不純物の指標となる酸価は、「キザキノナタネ」よりも低い値でしたので、「ペノカのしずく」は油の歩留まりの改善が期待できる品種だと考えています。
搾油粕については、「キザキノナタネ」と比べて遜色のない肥料成分を含有していました。グルコシノレートの含有量はまだ検査中ですが、キャノーラ種と同様の低い値が出ると期待しています(その後に出た検査結果は飼料として利用可能な程度の低い値だった)。
一方、2023年にペノカのしずくを生産した農家からは「キザキノナタネの8割程度の収量に留まっている」「菌核病が発生した」などの報告がありました。気候の影響など原因は不明です。オーストラリアから輸入しているナタネの搾油粕は食べてみると甘みを感じますが、「キザキノナタネ」の搾油粕は苦いです。これはグルコシノレートの含有量の違いだと思います。「ペノカのしずく」はグルコシノレートの含有量が低く植物体に甘みがあるので、「キザキノナタネ」では見られなかった鹿などの食害の可能性を懸念する農家もいます。そのような状況の中で、「ペノカのしずく」の生産を続けるのを不安視する向きがあります。ですが、「ペノカのしずく」は、搾油粕が肥料だけでなく飼料向けにも出荷できるので、非常に良いものだと思っており、次年度の生産が上手くいくよう期待しています。
現在、北海道のナタネは秋播き小麦との収穫時期とバッティングしています。そのためナタネを作る農家がなかなか増えません。春に播いて、生育期間が短くて夏頃に収穫できる春播きのナタネの開発を望む声は多いです。試験的に北海道で、ヨーロッパから輸入したNON-GMの春播きナタネを栽培しています。国産品種ではないという問題はありますが、このような品種の普及する可能性もあると思っています。
(抜粋)
