あの日憧れた色とりどりのシリアルの記憶を塗り替える
堤 未果(国際ジャーナリスト)
【まもなく発売】季刊『社会運動』2025年4月発行【 458号】特集:食の自治の可能性を拓く 瀬戸際にある飼料とNON-GMO
子供の頃、休みの度に米ロサンジェルスに住む祖母を訪ねた時の、忘れられない記憶がある。
アメリカの巨大スーパーに並ぶ、カラフルな子供用シリアルの数々だ。
ウサギの絵が描いてある箱に入ったとうもろこしで出来た丸いパフに、赤やピンクや黄色に青に緑色で着色されている。アメリカらしい明るくダイナミックなそのイメージが、幼い私には眩しかった。テレビをつけると、ケロッグ社のこのシリアルに子供たちが牛乳をかけて食べるコマーシャルと共に流れてくるのはこんな歌だ。
〈ビタミンや鉄分が入っていて、子供のための栄養バランスも抜群です…〉
あの頃の私は知る由もなかった。
流れてくる華やかな映像の陰で、砂糖と添加物だらけのシリアルを売るために、子供達をターゲットに年間150万ドル(約3億円)という巨額な広告費が使われていることや、右肩上がりに上昇し医療費を押し上げている子供達の肥満率や心臓病、糖尿病の発症率、時の政府や規制当局に注がれる企業献金が、命と健康に関わる情報を黒塗りにし、出向という形で送り込まれる企業幹部に次々に規制を緩めさせる、政府と業界の間の見えない〈回転ドア〉の存在があることについて。
(抜粋)