ウリ動物病院生命社会的協同組合
上前万由子(株式会社異路(IRO)代表取締役 )
【まもなく発売】季刊『社会運動』2025年4月発行【 458号】特集:食の自治の可能性を拓く 瀬戸際にある飼料とNON-GMO
韓国では2007年頃から、日本語の「ペット」に相当する言葉を使用する際、従来使用されていた「愛玩動物(애완동물)」という言葉に代わって「伴侶動物(반려동물)」という言葉を使うことが多くなってきている。「伴侶(반려)」は「共に歩む仲間、パートナー」を意味し、「動物(동물)」と組み合わせることで、単なる「飼育動物」ではなく、「家族の一員として共に生きる存在」という意味を持っている。
「伴侶動物を愛する人びとが作った社会的協同組合」であるウリ動物病院生命社会的協同組合(以下、ウリトンセン)は、ソウル市麻浦区に本拠を置く世界初の協同組合型動物病院である。
2013年1月の設立構想から11年、15年5月の開院から9年、人と動物が健康に共生できる社会の実現を目指してきた。今回は、その歩みと未来像について、事務局長・常務理事のキム・ヒョンジュさんからお話を伺った。
ともに健康で幸せに暮らせる社会づくり
―ウリトンセンを日本語に訳すと、「私たちの弟・妹」という意味になりますが、非常に可愛らしく興味深い名前ですね。「ウリ動物病院生命社会的協同組合(ウリトンセン)」にはどのような意味が込められているのでしょうか。
正式名称が非常に長く、設立準備の段階で略称を考える中で、「ウリトンセン」という組合の理念を込められる言葉が自然と生まれました。韓国語で「ウリ」は「私たち」、「トンセン」は「弟・妹」という意味です。漢字で『同生(韓国語では、トンセンと読める)』と書くと『共に生きる』という意味も持ちます。家族として世話をする存在であり、また動物たちによって私たちも生かされている双方向の関係性を表現しています。
また、「生命(生)」という言葉を入れたのは、動物医療機関として特別な意味がありました。医療機関としての性質を表す「生命」という言葉を選びました。
―そもそもなぜ動物病院を「社会的協同組合」という形態で運営することになったのでしょうか。
設立のきっかけは、ソウル市麻浦区で医療福祉社会的協同組合にかかわっていた市民たちの「なぜ人の病院には協同組合があるのに、動物病院にはないのだろう」という素朴な疑問でした。韓国の動物医療には公的な医療保険制度がなく、病院によって診療費が大きく異なることや、高額な医療費が飼い主の大きな負担となっているという課題がありました。
「みんなで協力して病院を作り、適切な医療を提供しながら、経済的な理由で治療を受けられない動物たちへの支援もできないだろうか…」。そんな思いから、協同組合型の動物病院設立を目指すことになりました。
「社会的協同組合」を選択したのは、法的な要件が背景にあります。2013年に韓国の獣医師法が改定され、法人として動物病院を開設できるのは非営利法人に限られることになりました。当初は一般の協同組合として設立を目指していましたが、一般の協同組合は法律上、非営利法人として認められません。そのため、社会的協同組合として再出発することになったのです。
(抜粋)
