生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

弾劾と内乱裁判と大統領選挙後 社会連帯経済の展望は
崔珉竟(京畿道議会政策支援官)

【まもなく発売】季刊『社会運動』2025年4月発行【 458号】特集:食の自治の可能性を拓く 瀬戸際にある飼料とNON-GMO

昨年12月3日の非常戒厳から2カ月が経った(原稿執筆時は2025年2月上旬)。この間、様々な情況が明らかになり、事態が早く収拾されると期待したが、現実は反対に向かっている。断固たる処罰と迅速な政局安定どころか、戒厳を支持したり、それに同調して暴力を行使し、恐怖を助長する集団まで登場している。韓国は民主共和国ではなく、既得権を持つ者の貴族政に回帰しているようだ。

 民主共和国で軍隊は政治的中立を守り、市民を保護しなければならない。これは文書上の当為的規定ではなく、数回の軍事クーデターを経験し、市民社会が血で刻んだ鉄則だ。しかし、非常戒厳を謀議して実行する過程で、軍隊はまるで私組織のように動いた。

 警察も同じだ。ソウル西部地裁での暴力事態は、暴力行為の実行者に対する処罰は進めているが、彼らの背後で暴力を扇動した宗教者や極右性向のユーチューバーへの捜査には躊躇している。

 韓国で宗教が政治に介入した歴史は長いが、このように露骨で暴力的に介入したことはほとんどなかった。反共主義と嫌悪が入り交じった奇怪な十字軍が、宗教裁判でも開くかのように過激化しているのに、公権力がこれを統制できずにいる。暴力を使わなくても、「味方でなければ悪であり、悪を除去してこそ善を実現する」という極端な宗教は、政治に悪影響を及ぼす。このような世界観では討論が不可能なだけでなく、相手との妥協点を探るのも難しい。

沈黙する財閥、国民の関心は大統領選へ


 このように、騒々しく現れる勢力がある反面、静かに息を殺して表に出ない勢力もある。為替相場が乱高下し、景気が激しく萎縮し、朴槿恵弾劾の時より経済的な衝撃が激しいにもかかわらず、財閥や韓国経済人協会は沈黙している。

 尹錫悦は「自由市場」を叫んだが、実際には行く先々で財閥トップらを脇に立たせた。海外や国内を歩き回る時に同行した財閥トップらは、今の事態をどう判断するだろうか? 朴槿恵弾劾の時に約束したように、財閥は政経癒着の輪を自ら断ち切ったのだろうか? 専門経営より権力との癒着を選んできた財閥家が静かなのには、確かに理由があるはずだ。問題は、この不正を暴かなければならないにもかかわらず、政治の関心がすべて早期大統領選挙に集中しており、選挙は財閥に有利な免罪符になってきたという点だ。

 現在、韓国社会は弾劾と戒厳にかかわった者だけでなく、各分野の利害関係がからみ合った状況だ。

 政治的不安は、対外信用度の下落につながった。一部産業の輸出でかろうじて延命してきた韓国経済に困難をもたらし、これによる為替レートの暴騰と株式市場の混乱につながり、小商工人と自営業者は危機的状況に追い込まれた。

 全国民の関心事は弾劾と内乱裁判に集中している。その結果によって大統領選挙が春までには行われる可能性があるため、何もできない、現在の状況を維持せざるをえない哀れな状況に置かれている。

政治不安のなか、社会的経済は社会の核心軸を目指す


 この状況下において、韓国社会的経済連帯会議は2024年12月21日「2025社会的経済展望大会および新年ネットワーク」を開催した。社会的経済関係者と専門家たちが集まって今年の挑戦課題と機会を議論し、変化と革新のための方向を模索したのである。社会的経済の役割を改めて可視化させて市民の体感度を向上し、持続可能な社会を実現するための具体的な方案を議論した。特に、昨年は政府政策が社会的経済に非協力的で予算が削減された状況にあっても、第6回大韓民国社会的経済博覧会を成功的に開催したことを主要成果と評価した。

 さらに韓国社会的経済連帯会議は今年、「社会的経済」から「社会連帯経済」への名称変更に関する実践方針を確定し(注)、地域循環経済、介護・福祉、気候危機対応など具体的な議題に集中して活動することを通じて、市民との連帯を強化するという意志を明らかにした。

 2025年の事業計画には社会的経済基本法の制定、政策対応力の強化、地域中心の連帯活動の拡大が含まれ、社会的経済が韓国社会の核心軸として位置づけられるよう努力する方針だ。

 この10年間、社会的経済は様々な政策的支援と市民社会の連帯を通じて量的成長を遂げてきた。社会的企業、協同組合、マウル企業など多様な組織が登場し、社会的経済組織の数と活動範囲は拡大した。このような量的増加にもかかわらず、いくつかの構造的限界が社会的経済の持続可能性を制約している。

 社会的経済組織は一般市場の競争論理と異なる社会的価値を追求して運営されるが、市場の変化と需要に対応する力量が不足している。特に、デジタル転換とESG(環境、社会、ガバナンス)経営など新しい市場トレンドに対する適応力が不十分であり、競争力強化が必要な状況だ。政府の補助金と外部からの資金支援に過度に依存する構造は、社会的経済の自立性を弱化させ、長期的に持続可能な生態系を構築する際の障害物として作用し、社会的経済組織が主体的に力量を発揮することを阻害している。​

地域の経済的自立のみならず民主主義と社会的連帯の価値を強化する


 このような限界を克服するため、2025年に韓国の社会的経済陣営に次のような改善方向を提案してみようと思う。

 デジタル移行に積極的に対応して、プラットフォームベースのビジネスモデルの開発を支援する必要がある。これを通じて地域社会のなかで生産と消費を連結するシステムを構築し、市場の変化を先導できる革新性を強化することと、ESG経営を内在化し、グローバルサプライチェーンの実態調査と炭素中立要求に対応できる社会的企業を育てることが重要だ。このため必要なのは、社会的金融システムの拡充と地域を基盤とする社会的金融ネットワークを構築して、地域社会住民と企業が共同で出資し、利潤を共有する方式で資本の地域循環を実現することだ。その結果として協同組合とクラウドファンディング等を通じた自律的資本調達を支援し、政府の補助金依存度をだんだんと減らすことが可能になる。

 また、過去10年間にわたる社会的経済組織間の協力と連帯を通じて規模の経済を実現し、共同購買と販売ネットワークを活性化しなければならない。そのために地域の中間支援組織の役割を拡大し、教育およびコンサルティングを強化して組織の運営力量を高めることが必要だ。

 社会的経済は地域循環経済、市民が主導する炭素中立プロジェクト、ローカルフードシステム構築など持続可能な社会モデルを提示して経済的自立を越え、民主主義と社会的連帯の価値を強化し、市民社会と地域社会を再構成する役割を遂行する潜在力を持っている。

 企業活動の社会的責任と地域社会の価値を結合して新しい経済生態系を創り出し、市民主導の社会的経済活動を通じて中央集権的構造を補完し、民官ガバナンスを再構築しなければならない。

 予測よりも早く2024年12月、韓国社会は超高齢社会に到達した。人口減少と雇用不安など解決すべき構造的問題に直面している。

 そして12・3戒厳令と弾劾政局の最中でもある。2025年の桜の時期に大統領選挙が予想され、その結果は来年6月の地方自治選挙につながるだろう。このような危機の中で、韓国の社会的経済は重要な転換点を迎えている。量的成長を越えて質的跳躍を成し遂げるための自生力強化と構造的革新が必要だ。

大統領選挙の過程で、候補たちは社会的経済にどのような提案をするのか、早くから興味津々である。

注……韓国社会の脈絡では社会的経済は、協同組合、社会的企業、マウル企業、自活企業、ソーシャルベンチャーなどが該当し、国や自治体が主体的に活性化した組織であると理解される。こうした狭い解釈は、社会的経済が持つ可能性を阻んでいる。韓国社会的経済連帯会議では、運動として社会的経済を省察し、新たなアイデンティティ確立のため議論を行ってきた経緯がある。すなわち、既存制度の下で区分されてきた社会的経済だが、OECD基準のように連帯経済の概念も含めることで実践の範囲や内容が豊富になっていくことや、公益法人や非営利民間団体をも含めて実体的な「社会連帯経済」という概念で再構成することの意義を考察した。

(全文)

インターネット購入