●岩根邦雄との出会いあってこそ、いまの平田牧場がある
平田牧場グループ会長 新田嘉一
窮地で出会った生活クラブ
「岩根邦雄さんと知り合ったのは1973年、50年以上前のことです。もうそんなに経つんだねえ。隣村の山形県議会議員から『遊佐町の米を取り引きしている小さな生協が東京にある』と紹介され、世田谷の生活クラブ本部に出かけて行ったのが始まりでした」と新田さんは振り返る。
その頃、新田さんは東北の生協から「無添加のハム・ソーセージを作ってほしい」という要請を受け、ほぼ無菌状態を保てるクリーンルームの建設に投資し、社員も増員したものの、販路が開けず累積赤字3000万円を抱える苦境にあった。食品添加物の人体への影響や発がん性に関心が高まりつつあったものの、肉そのものの色をした無添加加工製品は見た目が悪く値段も高いと不評で返品が続いていた。
「岩根さんと私は1歳違いで同世代だけど、でっかい理想を語る人だなぁというのが最初の印象。『生産者もよし、消費者もよし。そんな新しい流通を目指して運動している』と聞いて感心しました。でも本部は小さなプレハブで、正直、こんなバラックで物を売って金になるんだろうかと不安にもなりました」と新田さんは笑う。
(抜粋)