夕暮れのフランクフルト、クルド人の家族史を聞く
作家・イラストレーター 金井真紀
「わたしは今日、絶対にやりたいことがある」
ドイツ、フランクフルト中央駅前、夕方5時。わたしがそう切り出すと、サンドイッチを頬張ったアメドさんは「なんだい?」と問うように眉を上げた。
「わたしは今日、絶対にビールを飲む!」
高らかに宣言すると、アメドさんは吹き出した。
だって、ドイツに来て4日も経つのに、わたしまだ一滴もビール飲んでないんだよ。このままおめおめと日本に帰るわけにはいかない。今夜という今夜はビールを飲む。絶対に飲む。わたしひとりでも飲みに行く!
ビールに異常な執着を見せるわたしに気圧されたアメドさんは、サンドイッチを飲み込んで言った。
「わかった、わかった。もちろん付き合いますよ。一緒にビール飲もう」
(抜粋)