水と石油の滑稽が食料危機を引き起こす 1.石油の危機 食料生産には大量の石油エネルギーが不可欠(エネルギーアナリスト 大場紀章)
①石油の危機
食料生産には大量の石油エネルギーが不可欠
2020年代には石油危機が到来する!
現在の世界の石油の生産状況を簡単に言えば、「量はあるけれど、採掘するためには従来よりかなりのコストがかかる」という状況にあります。つまり、1カ所から大量の原油が掘削できる大型油田が新たに発見されることがなくなったのです。残っているのは、政情に不安のある中東、大西洋や北極海の海底です。あるいは大陸にある油田でも広範囲な地帯に少量がまんべんなく分布しており、従来の方法では掘削しにくい場所ばかりになっているのです。
現在はガソリン1リットルあたり120円程度ですが、価格が1000円になれば、現在より何倍もの量の石油を掘削することは可能です。ですから必ずしも石油が枯渇しているわけではありませんが、膨大なコストをかけなければ採掘できないという、非常に危機的な状況になってきているのです。
すでに「国際エネルギー機関(IEA)」は2010年に、「世界の在来石油の生産量は2006年にピークを迎えていた可能性が高い」という報告書を発表しています。世界の石油産出量の頂点のことを「ピークオイル」と呼びますが、後述する「シェールオイル」などを除き、普通の油田から出る在来型の石油の産出量はすでに頂点を超えてしまったというのです。石油の生産量がピークに達した後は、減少の一途をたどります。
ここ数年、石油価格は下がってきています。2014年頃まで高値が続いた石油価格に世界経済の成長がついていけなくなっているためです。無理して成長を追い求めたつけがまわっているのです。今後の需要見込みに懸念が出ていることを、中東の産油国がシェア獲得戦略に利用しているため、低価格競走が長期化しているのです。
ですから本当は、現在の石油価格では世界の供給量の3割程度しか賄えません。つまり、このままでは採掘できないほど価格が下がっているのです。この状態が続くと油田開発がストップしてしまい、おそらく2018年頃には供給力が脆弱になる恐れがあると、石油業界では危惧が広がっています。さらに、こうしたことを繰り返しているうちに、2020年代になると価格が高騰するか、あるいは石油を買える人と買えない人がいるような世界が来ると予測しています。
(P.28~P.30 記事から抜粋)