世界を変える「食べ方」すべての人に、食べ物を。(セカンドハーベスト・ジャパン)
寄付活動を社会のイノベーションに
セカンドハーベストの芝田さんは語る。
「私たちが一番大切にしているのは『信頼関係』です。『賞味期限が迫っている食品を適 当に送ってください』などと要求することはなく、食品を寄付する企業や団体と互いに納得し、信頼できる関係を築いてから始めます。だから、すぐに寄付が始まることもあれば、いろいろな話をしてからということもあります。例えば、食品事故やリコール商品が出たらどうするのか、寄付証明は出してくれるのかといったことを、納得し合えるまで話し合うわけです」
セカンドハーベストは設立当初から、企業などを個別に訪問して食品提供の協力を 求めたことはない。食品企業が集まるようなイベントなどで活動の広報をしたことはあるが、それも「フードバンクという活動をしていますから、食品ロスがあるなら当団体のサービスをご利用ください」といった程度。それを聞いて関心を持った企業や団体が、自主的に連絡を取ってくれたところから広めてきた。
「お互いの事情を理解し、できることに取り組みながら、今の社会にイノベーションを起こそうと思っているので、どちらが上でどちらが下かということはありません。もしも、対等な関係でないのならば、私たちは受け入れを断ります」と、芝田さん。
「西友/ウォルマート・ジャパン」と「JA 甘楽富岡(かんらとみおか)」(群馬県)が協働で、販売対象にならない「規格外野菜」を、フードバンクへの寄付食品として活用する方法を作った。この連携は、2015年から本格的に始められた。健康的な食事には欠かせない野菜類は、福祉施設などでも常にニーズの高いものだが、鮮度保持が難しいことからフードバンクへの寄付は容易ではないとされてきた。そんな中、西友/ウォルマートとJA甘楽富岡は、会員農家からの規格外野菜の納品に際して、西友で販売する野菜と同じ流通網を使うことで、寄付先の施設に新鮮な野菜の提供ができるようになった。販売できない規格外野菜を無償で新鮮なうちに提供できるシステムを作ったということは、社会にとってもイノベーションの一つと言ってよいのではないだろうか。
セカンドハーベストには「フード・アドバイザリー・ボード」という場がある。すでに食品の寄付を行っている企業や、検討中の企業の担当者と、セカンドハーベストのスタッフが集い、現在の問題点や悩み、要望など、ざっくばらんに情報交換をするのである。こうした場を設定していることからも、セカンドハーベストと寄付企業・団体の根 底にあるのは、困難なこの社会問題を少しでも改善するための「パートナーとしての信頼関係」であることが伺える。
(P.50~P.52 記事から抜粋)