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市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

「食農共育」が社会~② 食べることは生きること 近藤惠津子さんインタビュー

季刊『社会運動』 2016年7月【423号】 特集:食料消滅!?

子どもたちの気づきを育てたい


― 小・中・高等学校での総合的な学習の 時間のプログラムとして、食育の ワークショップにも長年取り組んで いますね。


 オリジナルプログラムである「私の食が世 界・地球をつくる」では、現在の日本は食材の 大半を海外に頼り、石油などのエネルギーを 使って輸入していることを「フードマイレー ジ」という視点からとらえます(フードマイ レージとは、食材が産地から食卓までの輸送 に要する二酸化炭素の排出量をその距離と食材の重量で数値化した指標)。その視点で、食 料自給率、飢餓に苦しむ国と飽食の国の状 況、地産地消などを考えるということです。 つまり消費者の買い方・食べ方・暮らし方から 食をめぐるさまざまな問題に気付いていこう というものです。手づくり豆腐の授業もあり ます。
 食べ物がどのようにして自分たちの手元に 届くか、その背景にある世界の状況はどう なっているかなどを小学校の授業でしますと、まず給食の残飯がぐっと減ります。買い物に行った時に、食品の表示を見て「これは買わない方がいいと子どもが言いました」という保護者の話も聞きます。
 中学校1年、2年では、フードマイレージのプログラムと、外国から輸入している海老やパームオイルが、現地の自然環境を破壊して生産されている問題などを考える環境編のプログラムに取り組みます。3年は「食を選択する目を養う」というテーマで、添加物、遺伝子組み換え、食品表示の見方などを学びます。
 添加物の話をする時は、生徒たちが普段飲んでいる清涼飲料水も取り上げます。表示に書いてある原材料の果糖ぶどう糖液糖、カラメル色素、酸味料、香料などを用意して、目の前で作って飲んでもらうのです。「○○と同じ味がする! 」、「こういうものが入っているのかぁ」と驚きます。添加物の実態を知るかなり刺激的な授業になります。
 「食品の選び方を考える買い物ゲーム」の授業では、一つのメニューを作るために食品の金額と表示を記載したリストから、予算内で何を基準にして買うかをグループで話し合い、発表します。同じ予算で同じ品目を買うことになっているのに、ものすごくバラツキが出ます。食品を選んだ理由を聞くと「加熱して食べるものはいいかなと思うけど、生で食べるものは国産にこだわりました」など、それなりの理由があります。添加物の授業の後なので、安い食品には安いなりの理由があることは学習していても、やはり生活していく上では、高いものばかり選べないし、すべてを自分が作れるわけではないので、どこで妥協するかを考えるわけです。でも、カロリーカットのマヨネーズの実験をしたのに、そういうマヨネーズを選んだ班には、「ちょっとこの理由を説明してもらおうじゃないの」と言いますけどね。
 ある中学校では、まとめに「地場野菜を使って世界各国の料理を作ろう」という授業をします。給食の栄養士さんにお願いして、地場の野菜をできるだけ準備してもらいます。1クラス6班で、中国、韓国、エスニック、地中海、日本料理、郷土料理をそれぞれ3品目ずつ作ります。レシピをみんなで読みこなし、作り方を確認して買い物リストを作って、地場野菜以外のものは買い出しに行き、調理します。半日かけて料理が出来上ったらテーブルコーディネイトをし、ビュッフェ形式に並べ、みんなで食べます。お世話になった先生方にも招待状を出して、食べに来ても
らいます。先生からも「いつもとは違う生徒の表情や態度を見られる」と評価していただいています。
 生徒たちの感想には、それぞれの発見や驚きなどが書かれています。中には「将来、食に関係する職業につきたい」「栄養士になりたい」と書いている生徒もいて、手ごたえと責任を大いに感じます。この授業は10年以上続けていますから、卒業した生徒の話を聞くこともあり、その中には実際に食や農業関係の職業に就こうとしている大学生もいます。
 一連の授業には、普段の授業とは違うインパクトがあるので、児童・生徒たちには暮らしに結びついた課題をたくさん投げておくべきだと思っています。

(P.113~P.116 記事から抜粋)

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