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ブラジルのアマゾン流域で力持ちの日系移民に会った
作家・イラストレーター 金井真紀

【まもなく発売】季刊『社会運動』2026年1月発行【461号】特集:「米が足りない」のなぜ

ゲートボール場には八代亜紀の演歌が大音量で流れていた。ベンチでビールを飲んでいた男たちが声をあげる。

「おう、ねえちゃん、飲もうぜぇ」

 まだ午前中なのに、すっかり出来上がっている。

「日曜だから、朝から飲んでもいいべ。ねえちゃんもここに座れ」

 キンキンに冷えた缶ビールを渡され、気がついたら「サウージ(乾杯)」に巻き込まれていた。それにしても、とわたしはニヤニヤする。まるで昭和じゃん。八代亜紀のハスキーな歌声も「ねえちゃん、飲もうぜぇ」なんてセリフも久しぶりに聞いたよ。

 2025年10月、わたしはブラジルのアマゾン流域の町トメアスーを訪ねた。ここに最初の日本人が移住したのは96年前のこと。記録によれば43家族189人が神戸港から約2ヶ月かけてたどりついたという。慣れない気候のなかジャングルを開墾し、多くがマラリアに斃れた。「カカオをつくれば儲かる」という触れ込みだったがカカオ栽培はまったくうまくいかず、野菜や米を育ててどうにか生活の糧を得た。第二次世界大戦が始まると「敵性国民」として迫害された。戦後はコショウ栽培で活況を呈したが、1970年代には病害で壊滅的打撃を受け……と、入植の歴史は苦労の連続だ。現在トメアスーの日系移民は多品種を混植する持続可能な農業スタイルを確立し、地元のブラジル人とも信頼関係を築いていると聞いて、ほっとする。

(抜粋)

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