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■2015年11月10日 声明:国会におけるTPPの批准に強く反対します。

声明

国会におけるTPPの批准に強く反対します

 

2015年11月10日

市民セクター政策機構・常任理事会

 

 TPP交渉参加以後の2年にわたって、安倍内閣は「保秘契約」を理由に秘密交渉を続けてきました。市民からはTPPに対する様々な懸念が表明されてきたにも関わらず、情報を開示することなく、2015年10月5日には「大筋合意」に至ったと発表しました。充分な説明も国民的議論も抜きに、交渉を進めてきたことに対し、強く抗議します。

 

 その後、11月6日になって政府はようやく「大筋合意」の概要を公開しました。それと同時に、「関税撤廃や引き下げによる農林水産品への影響は限定的なものでしかない」といった分析結果も公表しましたが、生産者の深刻な受け止め方とは大きな差があります。特に、コメ、牛肉・豚肉など政府が重要品目と位置付けた品目ですら、協定発効7年後から再協議を行う規定が盛り込まれており、いずれ関税完全自由化に向けての布石としか考えられません。

 

 私たち市民セクター政策機構は、生活クラブ生協の組合員・職員、生産者と意志ある研究者によって活動しており、主要なテーマは「持続可能な社会の形成」にあります。その実現の鍵は、地域を基盤にして循環型の生産と消費の構造を作ることであり、巨大な多国籍企業が中心になって世界的な自由貿易を推進することとは正反対の方向にあるものと考えます。

 

 安倍首相は「TPPを契機にして日本農産物の積極的輸出を進め、儲かる農業へ転換」すると主張します。しかし仮にそれが可能であったとしても、超高齢化が進む日本農業の中で対応・実行できるのはわずか一握りの企業でしかないでしょう。大多数の農家は廃業に追い込まれ、食料自給率が大幅に低下することは確実です。日本の食料安全保障はどのように担保されるのでしょうか。

世界を見れば、新興国の消費が拡大する一方で、異常気象による減産が毎年、各地で起きており、食料価格は高騰し続けています。マスメディアが伝えるような「消費者メリット(食品価格が下がる)」の実現など幻想に過ぎません。これまで何とか農地・農村を支えてきた協同組合は衰退し、日本の地方が再生不可能になる大きな危険性があります。

 

 しかもTPPが対象とするのは農産物に限らず、自動車・部品、バイオ医薬品、保険、投資、知的財産権など、関税以外のあらゆる分野においても国内の規制を撤廃させようとするものです。そのルールは「21世紀の新しい自由貿易協定」どころか「アメリカの国益を中心とした、多国籍企業による世界市場の支配」でしかありません。TBT(貿易の技術的障害)として合意された内容によっては、長年にわたる日本の消費者意識と生産者努力によってつくりだされてきた、品質基準が貿易障害とみなされかねません。

また、食の安全に関わる「遺伝子組み換え(GM)作物」については、情報交換のための作業部会をつくることになったと報道されています。しかしその実態は、「輸入国の要請があれば、輸出国でGM作物をつくる企業へ情報共有を奨励する規定」であり、バイオテクノロジー企業が遺伝子組み換え作物を世界的に普及する体制づくりに他なりません。

 

まずもって日本政府は、TPP交渉に関し、交渉経過や他国からの要請内容も含めてすべて公開し、TPP参加のデメリットも国民に明らかにすべきです。その上で、国会内だけでなく市民を交えた国民的議論の場を設定すること。国会は絶対に批准しないことを、市民セクター政策機構は強く求めます。