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■2017年5月23日 声明:共謀罪(テロ等準備罪)に反対する声明
2017年5月23日
共謀罪(テロ等準備罪)に反対する声明
一般社団法人 市民セクター政策機構 理事会
「共謀罪(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案)」について私たちは、強く抗議し、反対します。
政府は、共謀罪を成立させる目的として、第1に、国連で採択された「国際組織犯罪防止条約」を批准するためと説明しています。第2には、現行の法律だと、テロ等の組織的かつ重大な犯罪が計画段階で発覚しても強制捜査ができないため、オリンピック開催が危険にさらされる、と主張しています。しかし、「国際組織犯罪防止条約」はそもそも主にマフィアを念頭に置き、テロは対象外です。日本はすでに71の凶悪犯罪について予備罪・準備罪・共謀罪・陰謀罪を定めており、共謀罪を新設しなくとも他国同様、条約も批准できるし、重大犯罪に関して未遂以前の処罰が可能です。
また政府は、「適用対象はテロリズム集団、暴力団、薬物密売組織などの組織的犯罪集団を想定」していると説明しますが、「テロリズム」の定義がないため、何が組織的犯罪集団に当たるのか極めて曖昧です。捜査段階で「組織的犯罪集団」に一変したと判断するのは捜査当局であり、結局、一般人を含めた国民が広く監視捜査の対象になることは必然です。その上、「共謀」の定義も曖昧なため、捜査機関が恣意的に市民を検挙する危険性があります。さらに対象となる犯罪は277もあり、直接的にはテロ等の犯罪とは無関係なものが多数含まれていることも疑問です。(例えば、森林法、実用新案法、著作権法等々)
犯罪を事前に防止すると称して、人びとが「共謀」している証拠を集めるためには、盗聴などによる秘密裏の情報収集が必要であり、日本全体が監視社会へと変容してしまうことも問題です。さらには、自白の強要、密告の推奨、偽証の誘導などによって多くの冤罪を生みだしかねません。
そもそも共謀を抑制するために、刑法60条に「(共謀共同正犯も含め)二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」。61条で「1、人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。2、教唆者を教唆した、前項と同様とする。」と定められています。実行せずとも「合意段階」の捜査・処罰を可能とする「共謀罪」は、思想信条の自由や表現の自由を脅かすことになります。
「特定秘密保護法」「安保法制」、そして2020年を目ざした憲法「改正」といった流れの中で、今、「共謀罪」を制定する目的はどこにあるのでしょうか。私たちは、1925年に、“無産政党(共産党)を想定した結社の取り締まり”を目的とするとして制定された「治安維持法」を想起します。言論・結社の自由を制限し、「稀代の悪法」と呼ばれた同法は、改定を重ねて、1941年には、研究団体、サークル、親睦団体、信仰宗教団体等一般の団体も対象として、皇室に対する不敬、自由主義・民主主義の主張、戦争反対を疑われた人びとまで検挙されました。
拷問によって虐殺・獄死した人が194人、獄中で病死した人が1503人、逮捕された人は数十万人におよぶと言われます(「治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟」調べ)。
こうした負の歴史をもつ日本の政府が、再び「組織的な犯罪の取り締まり」や「テロ対策」を名目に、危険な「共謀罪」を制定することに、私たちは断固として反対し、廃案にすることを求めます。
以上