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市民セクター政策機構

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コラム③「子ども」
自分の名前が書けない人びとの戦後
(聖徳大学大学院准教授 萩原真美)

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 あなたは、これまでの人生において、自分の名前が書けなくて困った経験はありますか。特に、大人になってからそのような経験をしたことはあるでしょうか。そもそも、自分の名前を書けるかどうかについて、考えたことすらないという方が多いのかもしれません。


 日本は世界のなかでも識字率が高い国の一つです。しかしながら、現代の日本において、大人でも自分の名前を自分で書けないなど、文字の読み書きに困難を抱えながら生活している人々が少なからずいます。このような人々は、さまざまな事情でそのような状況に置かれていますが、その一例が子どもの頃に沖縄戦前後を生き抜いた人々なのです。


 彼らの多くは、学齢期に学校に通えず義務教育を終了できませんでした。このような人々は、「義務教育未修了者」と言われており、なかでも沖縄県の状況は深刻です。沖縄県は、人口に対する義務教育未修了者の割合が全国で最も高い都道府県で、その主な要因は沖縄戦および戦後の混乱や貧困です。


 それでは、彼らはいったいどのような状況に置かれていたのでしょうか。当時の子どもたちの状況が書かれている本に、『まちかんてぃ! 動き始めた学びの時計』(珊瑚舎スコーレ編高文研2015)があります。この本は、珊瑚舎スコーレ夜間中学校(以下、珊瑚舎スコーレ)に通う生徒さんへの聞き書きをまとめたもので、58本が収録されています。その内訳をみると、女性53本、男性5本と圧倒的に女性が多いのです。実際に珊瑚舎スコーレに通う生徒さんの9割以上が女性で、そのほとんどが長女または次女だそうです。


 それではなぜ、沖縄戦を子どもの頃に生き抜いた人々は、義務教育を十分に受けられなかったのでしょうか。『まちかんてぃ! 動き始めた学びの時計』を手がかりに、主な要因である①沖縄戦および戦後の混乱、②貧困、の二つの視点から見ていきたいと思います。

(P.28-P.29 記事抜粋)

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