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④ロシアによるウクライナ侵攻のいまこそ検討すべき「琉球の独立」(明治学院大学名誉教授・市民セクター政策機構理事 勝俣 誠)

【発売中】季刊『社会運動』2022年10月発行【448号】特集:青い海と沖縄 -未来を考える

松島泰勝さんの著書『琉球独立論』は、勝俣誠さんの著書『新・現代アフリカ入門』(岩波新書)をテキストにして、「アフリカ諸国の独立」という視点から、琉球が独立するに際して教訓とすべき課題を述べている。


そこで今回は、松島泰勝さんの取材記事に対して、
勝俣誠さんからコメントをお寄せいただいた。

 

 近代史における琉球とは「植民地問題」であり、第2次世界大戦後の琉球はすぐれて「沖縄問題」である。


 すなわち、戦前までの琉球は、松島氏が説明しているように、“幕藩体制および大日本帝国の臣民に対して、義務は課すが権利は認めない”という「宗主国対植民地」支配の形態をとってきた。


 そして戦後は“もう戦場にしてほしくない”という沖縄県の住民のこころからの願いを、「本土」は無視してきたのである。東西冷戦下の東アジアの地政学的文脈のなかで、強大かつ環境破壊・汚染型の軍事基地を県民に押しつけている永田町と霞が関と、それを何とも思わない「本土」の国民の傲慢さと無関心にこそ、「沖縄問題」のルーツがあるのだ。

 

 松島氏の「琉球独立論」を2つの点で興味深く思った。

琉球独立論は非武装中立と連邦共和国を基調に

 

 第一には、琉球人という集団的記憶ないしアイデンティティの政治的表現として、戦後の国際社会が認める国連憲章に基づき、独立への道を探っていることである。具体的には1960年、国連総会において採択された「植民地と人民に独立を付与する宣言」である。この宣言は、従属国の人民の尊厳を取りもどすために、住民投票を通した独立へのロードマップを示している。琉球人民の希求を実現するためには国連の「非自治地域リスト」に登録する必要がある。ところが統治国ないし施政国であった米国政府はその義務を果たさず、1972年に琉球を日本の一部にしてしまった。冷戦思考にある日米の共犯関係を松島氏は的確に指摘している。


 その観点から、ロシアによるウクライナ侵攻後の「新冷戦」が、第3次大戦といった「熱戦」へと、いつの間にか行きつくことがないよう、「琉球独立論は非武装中立と連邦共和国を基調としている」という松島氏の提言は、正論であり現実的である。

 

 第二に、「琉球独立論」は経済的に実現可能であり、かつ環境的にも持続可能なシナリオを伴っていることである。「本土」発の振興予算という大量バラマキによって軍事基地の維持・拡大を図る卑屈な従属的開発シナリオに対して、松島シナリオでは、近隣アジアの国々との地元発観光や、健康食品などのビジネス交流に立って独立すれば、すぐにでもスタートアップできる多様かつ内発的ビジネスへの道筋が提示されている。


 「琉球独立論」はいまだからこそ検討すべき価値のあるテーマである。

(P.117-P.118 記事全文)

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