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市民セクター政策機構

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①沖縄の自立と持続的発展を阻み続ける米軍基地
(沖縄持続的発展研究所所長 真喜屋美樹)

【発売中】季刊『社会運動』2022年10月発行【448号】特集:青い海と沖縄 -未来を考える

─まずは、第6次沖縄振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」について、率直な感想を聞かせてください。

 

 私はうちなーんちゅ(沖縄人)ですから、身内として厳しく言わせていただきますね。復帰から50年、国主導で策定された振興計画で県政運営を続け、補助金に大きく依存してきたというのは、県としてちょっと努力が足りなかったのではないかと思います。

 


 戦後、日本本土が急速に復興し、高度経済成長によって経済社会発展の基盤が整えられた時期、沖縄は27年間、米軍施政下にありました。この間は全てにおいて軍事優先ですから、人びとの暮らしの環境を整えることよりも、米軍基地の整備拡大が進みます。したがって沖縄では、生活環境をはじめ、あらゆる社会基盤の整備が大きく遅れました。復帰後、その遅れを取り戻すために、政府主導で沖縄の経済社会発展のための基盤を整備する様々な施策が行われ、いまに至ります。


 しかし、50年もあれば、基本的な社会インフラをはじめ、多くの生活や発展のための素地は十分つくられるだろうと思います。他方、復帰50年に策定された、沖縄の今後10年の将来ビジョンを描く「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」では、沖縄の発展は「まだ道半ば」であると表現されています。すなわち、「まだ道半ば」であるので、今後も政府からの莫大な投資が必要だという認識と言えます。離島振興などのために、今後も一定の振興予算は必要だと思いますが、現状の沖縄の中央依存は、他の都道府県の理解を得られるのだろうかという懸念を持っています。国の財源を使っているわけですから。


 復帰前から沖縄に入って調査をされている、環境経済学の第一人者であり財政学者の宮本憲一先生(大阪市立大学名誉教授)も、『沖縄論』(岩波書店2010)という編著のなかで、次のようなことを書かれています。

 

 日本が高度経済成長をしている間、沖縄は米軍統治下にあり、基本的な社会基盤が整備されなかったのだから、日本が投資をして沖縄を支えることは当然であったろう。けれども、第3次(振興計画)で社会基盤はほぼ整っており、第4次以降は明らかに賄賂である、と。宮本先生以外にも多くの研究者が、沖縄振興計画というのは基地を置くための賄賂、バーター関係にあるものだと指摘しています。


 この構造をつくったのは国であり、中央に依存した県政運営も、一自治体である沖縄県だけの問題とは言えません。そもそも復帰に伴い、沖縄県民が最も望んだ米軍基地の返還が実行されていれば、その跡地となる広大な空間を、沖縄県が発展するための種地として活用できたと考えられるからです。現在も、沖縄県の人口の8割と産業が集中する沖縄本島中南部都市圏の米軍基地の存在が、発展の阻害要因であることは間違いなく、基地の空間が民間で活用できていれば、戦後の沖縄の復興と発展はもっと異なるものになっていたと思います。そして、初代沖縄県知事・屋良朝苗が掲げた「県民福祉が最優先」の沖縄がつくられ、本来あるべき地方自治が行われ、現在のような中央依存構造とはなっていないのではと考えています。


 ですから、「お金と引き換えに、沖縄は基地を受け入れているのだろう」と言われがちですが、そう単純な話ではないのです。政府主導の沖縄振興が、米軍基地があるが故に阻まれている沖縄の発展を補う仕組みです。今後も継続されるのは、沖縄側ではなく政府の問題です。霞が関には、振興策による支援よりも、米軍基地の返還に力点を置いて欲しいと思います。

(P.79-P.81 記事抜粋)

 

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